2,221 / 2,752
DIY、監獄ライフに勤しむ
監獄生活 その09
しおりを挟む──エクリ、出陣。
その声を受け、どこからともなく開いた異空間から一人の少女が降り立つ。
標的が隠れる結界を攻撃していた星敵たちも、その変化に手を……止めはしない。
誰もよりも先んじて標的を討つ、それを目的とする彼らに妨害は通用しなかった。
どうせ他の星敵の仕業だろう、そう判断した彼らは──詰んだ。
「──“天淵黒亡”」
空に浮かんだ黒い太陽。
突然顕現したそれは、眼下に並ぶ強者たちに対し無差別の攻撃を開始する。
大半の者はすぐに対処を、そうでないものも自身のスペックの高さを信じ行動を続け、太陽を認識していた──だが遅い、皆等しく痛烈なダメージを負い、危険性を実感した。
唯一の例外は発動者──エクリのみ。
終従人形の名のままに、仕える主の命に従い彼女は動き出す。
「星敵の皆様、短い間ですがどうぞお付き合いを。ほんのご挨拶でしたが、喜んでいただけたようで何よりです」
黒い太陽が燦然と輝く中、彼女はスポットライトを浴びているかのようにこの場の者たちから視線を浴びる。
強烈な殺意、死を孕む魔眼、一点集中の熱線などが交えられている中、何も感じないかのように振る舞う彼女はただ謡う。
「我が主の命に従い、結界への干渉を図るすべてに攻撃を実行します。望まぬ方は、街への避難を。あちらへの攻撃は行いません──もちろん、街からの狙撃は許しません」
遠く先、街を囲う壁の上に居た星敵が小さく舌打ちを鳴らす。
この場から街まで数キロの距離だが、どちらも相手を把握する認識能力を持っていた。
『ウルサイ! オレノジャマヲスルナ!』
と、遠くを見ていた彼女に隙を見出したのか、一体の星敵が動き出す。
強靭な肉体と再生力を有する彼は、自由と引き換えに標的の討滅を請け負っていた。
だが三着までに間に合わず、外側から結界へ攻撃を繰り返すだけ。
痺れを切らしていた彼は、その苛立ちをぶつけようとエクリへと迫る。
「『コレクトキャプチャー』──“アップ・ロード:『造槌』”」
彼女は詠う、主が創り給うた御業を。
そして綴る、旧時代の理不尽の再来を。
その手には、どこからか生み出された闇が模る小さな槌。
「『闇剣』」
媒介は闇そのもの、槌が漂う闇を掬い取ると形を歪め剣と化す。
たった一度、それだけで漏れ出す闇が万を超える時雨となり──星敵たちに降り注ぐ。
「この場に居る時点で全員が同罪です」
口調だけは丁寧に、だが吐き捨てるように彼女は告げる。
太陽と雨は闇に堕ち、空はコクコクと昏く染まりつつあった。
0
お気に入りに追加
645
あなたにおすすめの小説
催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~
山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。
与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。
そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。
「──誰か、養ってくれない?」
この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。
神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜
FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio
通称、【GKM】
これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。
世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。
その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。
この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。
その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。
最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる