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DIY、監獄ライフに勤しむ
監獄生活 その09
しおりを挟む──エクリ、出陣。
その声を受け、どこからともなく開いた異空間から一人の少女が降り立つ。
標的が隠れる結界を攻撃していた星敵たちも、その変化に手を……止めはしない。
誰もよりも先んじて標的を討つ、それを目的とする彼らに妨害は通用しなかった。
どうせ他の星敵の仕業だろう、そう判断した彼らは──詰んだ。
「──“天淵黒亡”」
空に浮かんだ黒い太陽。
突然顕現したそれは、眼下に並ぶ強者たちに対し無差別の攻撃を開始する。
大半の者はすぐに対処を、そうでないものも自身のスペックの高さを信じ行動を続け、太陽を認識していた──だが遅い、皆等しく痛烈なダメージを負い、危険性を実感した。
唯一の例外は発動者──エクリのみ。
終従人形の名のままに、仕える主の命に従い彼女は動き出す。
「星敵の皆様、短い間ですがどうぞお付き合いを。ほんのご挨拶でしたが、喜んでいただけたようで何よりです」
黒い太陽が燦然と輝く中、彼女はスポットライトを浴びているかのようにこの場の者たちから視線を浴びる。
強烈な殺意、死を孕む魔眼、一点集中の熱線などが交えられている中、何も感じないかのように振る舞う彼女はただ謡う。
「我が主の命に従い、結界への干渉を図るすべてに攻撃を実行します。望まぬ方は、街への避難を。あちらへの攻撃は行いません──もちろん、街からの狙撃は許しません」
遠く先、街を囲う壁の上に居た星敵が小さく舌打ちを鳴らす。
この場から街まで数キロの距離だが、どちらも相手を把握する認識能力を持っていた。
『ウルサイ! オレノジャマヲスルナ!』
と、遠くを見ていた彼女に隙を見出したのか、一体の星敵が動き出す。
強靭な肉体と再生力を有する彼は、自由と引き換えに標的の討滅を請け負っていた。
だが三着までに間に合わず、外側から結界へ攻撃を繰り返すだけ。
痺れを切らしていた彼は、その苛立ちをぶつけようとエクリへと迫る。
「『コレクトキャプチャー』──“アップ・ロード:『造槌』”」
彼女は詠う、主が創り給うた御業を。
そして綴る、旧時代の理不尽の再来を。
その手には、どこからか生み出された闇が模る小さな槌。
「『闇剣』」
媒介は闇そのもの、槌が漂う闇を掬い取ると形を歪め剣と化す。
たった一度、それだけで漏れ出す闇が万を超える時雨となり──星敵たちに降り注ぐ。
「この場に居る時点で全員が同罪です」
口調だけは丁寧に、だが吐き捨てるように彼女は告げる。
太陽と雨は闇に堕ち、空はコクコクと昏く染まりつつあった。
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