86 / 2,815
DIY、冒険を求める
罪の禊
しおりを挟む『……反省、する暇も無かったな』
「すみません、虚弱体質なもので」
『いや、その言葉ですべてを済ませられると思うな。貴様のそれは、明らかに虚弱で済むレベルの弱さじゃない』
「あ、アハハハハ……」
さて、罪も禊ぎ終わった。
正直ウサギのオーラだけでも死ねるような俺には、ウサギの設定した贖いは向いていなかったのだろう。
大量にあった光の球だが、オーラが開放された途端に一気に破裂して消えていったよ。
そのときのウサギの顔ときたら……プッ。
『……仕方ない。もう一度、今度はオーラの演出は無しで行おう』
「え? まだやるんですか? それに、さっきのアレは演しゅ」
『──黙れ、貴様は何も知らなくて良い』
「……あ、はい」
今の威圧だけで、また用意した光球が破裂したのはご愛嬌だ。
◆ □ ◆ □ ◆
あれから、何度も何度も自分の罪を禊いでいった。
破裂する数にウサギがキレ、途中で定義を変更するという事態もあったのだが──
『……なぜだ。なぜ始まる前に終わるのだ』
「さ、さぁ……どうしてでしょうね」
『くっ、まさかこのような方法で罪から逃れるとは……これは、他のモノに伝える必要がありそうだ』
「えっ、何か言いましたか?」
後半は聞き取れなかったが、まるで望んで罪から逃れようとしている、との言い方は少し気になるな。
俺自身は罪を受け入れる気になったし、そのためにこうして待つこともしている。
ウサギのオーラが強過ぎるから俺は死ぬのであり、調整すればいいのだ。
その旨を伝えてみると──
『……すでに試している。新たに(手加減)などというスキルまで与えられたというのに、それでも貴様が弱すぎるからこうなるのだ』
「えぇー、そんな理不尽な」
『私としても、本当は手早く済ませたいのだが……森の制約に従い、ある程度本気の状態で行わなければ終われないのだ。だから、早く耐え抜いてくれ』
「無理ですって、何か別の方法は無いんですか? ……貴方を倒す以外で」
『……本来なら、そのようなことを言った者には罪が与えられるのだが。貴様には、こちらが嫌と言うほど罪を与えたからもう良い』
「ここでのんびりしている間に、もうやれることはやりましたので……どうします? 本当に方法が無いなら、強引な手段を試してみますけど」
転位装置を使いさえすれば、一応は脱出できるだろう。
なんせ、アップデートは何度もやっているからな……対『超越者』用の)。
ウサギはその言葉が真実と理解したのか、難色を示して少し悩み始めた。
『……正式な方法も幾つかある。罪を禊ぎ終えるか、私を倒すか──私のクエストを受けるかだ』
「何なんだ、この展開は?」
『罪を禊ぐのはダメ、私を倒すのも止めてもらいたい。ならば、残された方法は一つだけだろう?』
……うん、結局この展開か。
ため息を一つ吐いてから、ウサギの提示したクエストを引き受けるのであった。
20
お気に入りに追加
646
あなたにおすすめの小説

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】会いたいあなたはどこにもいない
野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。
そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。
これは足りない罪を償えという意味なのか。
私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。
それでも償いのために生きている。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる