虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,206 / 2,818
DIY、監獄ライフに勤しむ

獲得物確認 後篇

しおりを挟む


 契約の履行──魔導世界において重んじられている誓いを果たすべく、『愚かな賢者』に見せるのは『八大星魔:真海の主』から術式を模倣した“真海支配”。

「ふむ……微量な金属を含む水? ほう、混ぜ物をすることで純粋な水を不純な水と再定義させ、そのうえで海水としておるのか」

「はい。加えて──」

「あー、皆まで言うでない。考察もまた醍醐味なんじゃよ……そうか、ここ! この箇所で、従来の海水生成の術式を隔絶しておるのか! そして、それらを操作する術式……ここだけ妙な違和感を覚えるのう」

「あっ、そこは私用のものですので。ご使用の際は再度、『愚かな賢者』様に合わせたものを組み込んでください」

 俺もとい『SEBAS』が居なければどうにもならない制御術式だ、『愚かな賢者』とてすぐにはできないだろう……と思っていると首を回しこちらを見てくる。

「待て、『生者』……お主、これを扱うことができるのか?」

「ええ、まあ。ちょっとした裏技で」

「裏技だろうと外道だろうと構わぬ! その方法とはなんじゃ、星渡りの民共であれば誰でもできるのか!?」

「おお、落ち着いてください……ちょっと、危な──ッ!」

《……『静止の魔眼』を起動します》

 俺からより詳細な情報を聞き出そうとしていたのだが、『SEBAS』が遠隔でアイテムを使って動きを封じてくれた。

 使用した『静止の魔眼』は本来のモノではなく、劣化した『死天』製アイテム。
 眼球型のアイテムが、その視界に捉えた存在を一時的に静止させられる。

「──ふむ、時間停止か……じゃが、無駄。だがちと落ち着いた、すまなんだ」

「いえ、お気になさらず」

 自身を加速させたのか世界そのものを加速させたのか、いづれにせよ『愚かな賢者』は瞬間的に時の拘束を振り払った。

 そして再び熟考。
 俺はその間に、あるアイテムを取り出してスタンバイ。

「……これは、あまり意味のある術式では無かったか。制御の部分を弄れば、儂でもある程度海への干渉力は上げられるじゃろうが。しかし、不意打ちとしては少々薄いのう」

「『愚かな賢者』様……こちらを」

「ふむ、例の石か」

「はい。こちらにとりあえず三つほど、お礼の品を添えておきました」

 術式を三つ保存できる、それが俺の開発した『愚者の石』の効果。
 すでに中には三つの術式が入っており、そのうちの一つが“真海支配”だ。

「……それは期待できそうじゃな」

「またの便宜を図っていただければ」

「ふむ、それは中身次第じゃな……お主もなかなかイケる口か?」

「嗜む程度、ではございますが」

 何やらあくどい話をしているようだが、ある意味それは真理だ。
 人様が必死に考えた術式をパクっているわけだし……うん、文化遺産の強奪者だな。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

(短編)いずれ追放される悪役令嬢に生まれ変わったけど、原作補正を頼りに生きます。

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚約破棄からの追放される悪役令嬢に生まれ変わったと気づいて、シャーロットは王妃様の前で屁をこいた。なのに王子の婚約者になってしまう。どうやら強固な強制力が働いていて、どうあがいてもヒロインをいじめ、王子に婚約を破棄され追放……あれ、待てよ? だったら、私、その日まで不死身なのでは?

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました

ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。 王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。 しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...