虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、監獄ライフに勤しむ

獲得物確認 後篇

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 契約の履行──魔導世界において重んじられている誓いを果たすべく、『愚かな賢者』に見せるのは『八大星魔:真海の主』から術式を模倣した“真海支配”。

「ふむ……微量な金属を含む水? ほう、混ぜ物をすることで純粋な水を不純な水と再定義させ、そのうえで海水としておるのか」

「はい。加えて──」

「あー、皆まで言うでない。考察もまた醍醐味なんじゃよ……そうか、ここ! この箇所で、従来の海水生成の術式を隔絶しておるのか! そして、それらを操作する術式……ここだけ妙な違和感を覚えるのう」

「あっ、そこは私用のものですので。ご使用の際は再度、『愚かな賢者』様に合わせたものを組み込んでください」

 俺もとい『SEBAS』が居なければどうにもならない制御術式だ、『愚かな賢者』とてすぐにはできないだろう……と思っていると首を回しこちらを見てくる。

「待て、『生者』……お主、これを扱うことができるのか?」

「ええ、まあ。ちょっとした裏技で」

「裏技だろうと外道だろうと構わぬ! その方法とはなんじゃ、星渡りの民共であれば誰でもできるのか!?」

「おお、落ち着いてください……ちょっと、危な──ッ!」

《……『静止の魔眼』を起動します》

 俺からより詳細な情報を聞き出そうとしていたのだが、『SEBAS』が遠隔でアイテムを使って動きを封じてくれた。

 使用した『静止の魔眼』は本来のモノではなく、劣化した『死天』製アイテム。
 眼球型のアイテムが、その視界に捉えた存在を一時的に静止させられる。

「──ふむ、時間停止か……じゃが、無駄。だがちと落ち着いた、すまなんだ」

「いえ、お気になさらず」

 自身を加速させたのか世界そのものを加速させたのか、いづれにせよ『愚かな賢者』は瞬間的に時の拘束を振り払った。

 そして再び熟考。
 俺はその間に、あるアイテムを取り出してスタンバイ。

「……これは、あまり意味のある術式では無かったか。制御の部分を弄れば、儂でもある程度海への干渉力は上げられるじゃろうが。しかし、不意打ちとしては少々薄いのう」

「『愚かな賢者』様……こちらを」

「ふむ、例の石か」

「はい。こちらにとりあえず三つほど、お礼の品を添えておきました」

 術式を三つ保存できる、それが俺の開発した『愚者の石』の効果。
 すでに中には三つの術式が入っており、そのうちの一つが“真海支配”だ。

「……それは期待できそうじゃな」

「またの便宜を図っていただければ」

「ふむ、それは中身次第じゃな……お主もなかなかイケる口か?」

「嗜む程度、ではございますが」

 何やらあくどい話をしているようだが、ある意味それは真理だ。
 人様が必死に考えた術式をパクっているわけだし……うん、文化遺産の強奪者だな。

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