2,205 / 2,721
DIY、監獄ライフに勤しむ
獲得物確認 中篇
しおりを挟む冒険世界 ???
アイスプルに結界を張り終えた俺は、今回の旅で得たモノを確認する。
そして、そのうえで交わした約束を果たしに向かった。
「お久しぶりです、『愚かな賢者』様」
「うむ……よくぞ生きておったな」
「いえ、何度も死んではいますがね。ですが私が死のうとも、契約は生きたまま。我が名『生者』に掛けまして、そちらの方はきちんと履行させていただきました」
「死してなお、とはよく言ったものじゃ……がその辺はどうでもよい。それよりも、成果の方を見せてもらおうか──『騎士王』、ここからは儂らの話し合いじゃからさっさとどこかに行け」
そこは『騎士王』が密談などに使う謎の閉鎖空間。
前回同様、そこには『愚かな賢者』が待機しており契約の履行を求めている。
不服そうではあったが、契約だからと納得し『騎士王』は去った。
残されたのは二人、俺たちは契約について再度確認を取る。
魔導世界への来訪、それは一筋縄ではいかず『愚かな賢者』を頼ることになった。
その対価として、俺が出したもの──
「『八大星魔』の術式、ちゃんと得ておるのじゃろう?」
「『真海の主』様のものを。ただ、当人の術式ではありますが権能を再現などはできておりませんよ」
「それができるなら誰も苦労はせんよ。可能なモノも多いが、そちらはどこまで行っても猿真似よ。この世界の異端の【魔王】、奴のような異常者でも無ければのう」
冒険世界の【魔王】。
当代の人物は特異な存在で、他者の権能を奪うだけでなく存在を複製することで条件さえ満たせば過去の人物でも再現可能になる。
そのため、俺の権能を含め『超越者』の多くが権能をパクられていた。
……だが一度奪ってきちんと返上することで、揉め事を起こさない辺りがさすがだ。
過去には実際、過去の『騎士王』から制裁が下された【魔王】も居たらしい。
そこを弁えれば、生かしてもらえると分かる頭脳もまた厄介なところだろう。
閑話休題
さて、そんな【魔王】という例外を除いて権能を再現する方法──術式による限定的な再現もまた、人々の中で試みが何度も繰り返されているやり方だ。
術式による可能性は無限大。
ならば星々が人々に与えたオンリーワンを手に入れることもまた、可能なのでは……人の果てしない欲が行きついた末路。
当然、『愚かな賢者』もまたそれを試していることだろう。
俺も俺で試しているし、『騎士王』も似たようなことを言っていたことがある。
「『真海の主』は文字通り海の主じゃ。あらゆる海を創り上げる……故に、その触媒となる海を欠かすことを避けていた。そして、その策を奪ってきおったな?」
「──“真海支配”、これが『真海の主』様から得た術式です」
何も無い場所から生み出された海水。
それを『愚かな賢者』は、宝物でも見るかのように目を輝かせて眺めるのだった。
0
お気に入りに追加
643
あなたにおすすめの小説
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる