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DIY、偽装工作に走る
魔導世界密入 その42
しおりを挟む海を創る、そんな理不尽を科学的アプローチで成功したと思われる『真海の主』。
俺(もとい『SEBAS』)が暴いたその絡繰りは、理に適うものだった。
「人工的な海……混ぜ物をすることで、本当に可能なのか?」
「気になるのでしたら、領域に居る休人たちに確認を。分からずとも、私たちの世界で調べてから報告するでしょう。秘匿されるような情報ではなく、誰でも得られる知識となっておりますので」
「……くくっ、術式の神秘性を重んじる連中が聞けばどう思うことやら。まあ良い、今重要なのはヤツの海には仕掛けがあるということだ。『生者』よ、策はあるか?」
「正直に言ってしまえば、ございません。特定の、海の術式のみを封殺するのであれば術式全体を発動できないようにする方が容易だからです」
術式で一から海を創るのではなく、手順を踏んで海水を加工している。
だからと言って、そこに特別な仕掛けがあるわけではなくコストを抑えているだけ。
そう、干渉したところでさして変化があるわけではないのだ。
海水を奪ってもまた生成されるし、見た感じ弱点があるわけでもない。
単純故に対策が難しかった。
それならばいっそのこと、術式全体を封じてしまえば何もできなくなる……まあ、権能があるので完全には無理だろうけど。
だがそれをしてしまうと、こちらの陣営にも甚大な被害が生じてしまう。
また、相手側に近接戦が可能な魔導士が控えているかもしれないし……これは無しだ。
「そうですね……人工的である分、本来の海水よりも若干性能が落ちるかもしれません。世界樹の根も、枯れただけでそれ以上の変化はございませんでした。また、凍らせて以降話に現象をまだ起こしていません」
「ふむ、制約か……できぬわけではないが、見せぬことでこちらを誘っていると」
「おそらくは。しかし、こうしてじっとしているわけにもいきません。凍らせてはいますが、どうやら融かそうとしている模様。本来の海を取り戻せば、無制限に先ほどまでの現象を起こすに違いありません」
「ではどうするか? まさか、全員で特攻をなどとは言わぬだろう?」
尋ねているようで、『覆魔殿』の口元は面白そうだとばかりに吊り上がっている。
決定事項みたいだな……しかし、ここは我慢してもらおうか。
「皆さんには、可能であれば襲撃してきた魔導士たちの鎮圧を。最低限、もともと居た魔導士たちを襲わないように」
「……それで、『生者』はどうする?」
「今回の目的は私なのでしょう? そして、私もまた『真海の主』様にはご用件が。結界の改良は済みましたし、敵対される方にはお引き取りを願おうかと。こちらの世界で学んだことが通じるか、試してみたく」
「ふっ、いいだろう。協力はせぬが、敵対もまたせぬよ。思う存分、貴殿の力を傍観させてもらおうでは無いか」
心配そうな『界樹の神子』と神霊、そして少々ソワソワしている『必要悪』には申し訳ないがこの方向性で行こう──敵であれば、こちらに来る際の条件も満たせるからな。
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