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DIY、偽装工作に走る
魔導世界密入 その40
しおりを挟む妨害を乗り越え、海の底から海上へと出ることに成功した俺たち。
世界樹の根、そして結界の中から観た光景は──
「……凄惨」
すでに映像越しに見てはいたが、改めて状況は最悪と言えよう。
迷宮の中という、暴れても問題無い場所のせいか誰も遠慮をしていない。
結果、文字通り天変地異レベルの術式バトルが繰り広げられている。
海は荒れ狂い、辺りは焼き焦がされ、ほぼ不壊な迷宮には罅が生じていた。
「──」
『それで、これからどうするの? このままだと被害が大変なことになるだろうけど』
「いちおう、人的被害に関しては事前に想定して対策しておりましたので……ですが、ここまでの事態は想定しておりませんでしたので、このままだと長くは持ちませんね。一先ずは、時間を稼がせてもらいましょう」
球体のアイテム──中に光が籠められたそれを根っこに持ってもらい、そのまま勢いよく上へと投げてもらう。
飛んでいったアイテムは、術式バトルの余波を受けて破損。
内側から光が漏れだした瞬間──迷宮を遍く照らす陽光が、この場全員の意識を奪う。
「──『凍死の氷晶』」
その隙を突くようにして、こっそり仕込んでいた氷の結晶を海に落とす。
誰にも邪魔されることなく、それは効果を発揮し──海を一瞬で凍結させる。
「さて、今の間に」
「──」
『ねぇねぇ、それって権能?』
「似たようなものですかね? 休人……星渡りの民の中で、私が選ばれた力です──気づいてもらえましたか」
俺たちの下に転移で飛んできた二人。
姿が特定できない外套を纏う『必要悪』、そして王然とした振る舞いをする正当な魔法使いの頂点『覆魔殿』。
前者は侵攻が始まる前から、後者はその途中から俺に協力してくれている。
……まあ、いつ裏切られるか分からないので警戒はしているがな。
「お二人とも、ご無事ですか?」
「それはこちらの言だ。例の術式は……上手くいったようだな」
「はい、お陰様です。『必要悪』様も、感謝しております」
「──」
[いや、気にすることは無い。しかし……まさか二人も味方にするとは]
優れた交渉を評価してもらえているのか、『必要悪』が感心しているように見える。
実際には見えていないが……まあ、褒められて悪い気はしないか。
「こちらに居ない時は、商人のようなことをしておりますので。自分で申すのはアレですが、失敗を何度か経て今があります」
「アレを交渉と言って良いかは分からぬが、期待をさせそれに応じた成果を出しているのだから誇るが良い。だが……アレにそれは通じぬだろうな」
「『真海の主』様ですか……止まっていただくことは、できませんでしたか?」
「うむ。奴は『騎士王』に敗れ、星からも使命を果たすよう厳命されているからな。心変わりはありえぬだろう」
それを言うと、裏切った二人は別にその辺はどうでもいいのかもしれない。
星ごとに、ノルマとかあるのか……冒険世界というか死神様に出会えて良かったよ。
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