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DIY、偽装工作に走る
魔導世界密入 その38
しおりを挟むようやく術式の改良が始まる。
指摘を何度か受けつつ、世界樹を媒介とする術式を基にそれを魔改造──新たな結界術式を再構築していった。
しかし、術式が完成する前に問題が発生。
外部からの干渉か、結界が揺れ出した──時間切れかのようだ。
「──」
『うん、分かった。ちょっと見てきて……ってアレ?』
「脱出はできませんよ。侵入は繋がりを用いて可能でしたが、それも無しに出るにはどちらかが死ぬ必要が……もちろん、私が死にますのでご安心を」
「──」
『えー、ちょっと引いちゃうかも……まあ、それでいいならいいんだけど。けど、それだと外の状況が分からないね』
「いえ、それでしたらご安心を。こちらの機械で、外部の状況を映し出しますよ」
向こうからこちらの情報は分からなくしていたが、こちらから向こうの情報も分からない……なんてつまらないオチは嫌だしな。
そもそもの結界構築は俺の仕業、ならばそれを通す特定の通信を用意しておいても何もおかしくは無かろう。
「映像、来ます」
「──」
『まあ、当然と言えば当然かな? ただ、これは予想して無かったかも』
「……意外な、光景ですね」
まず、結論から言おう──先ほどの揺れは戦いの余波だ。
結界の周りはすでに水の中、周囲には巨大な渦ができておりそれが原因なのだろう。
第三魔道を模していた区画は完全に浸水。
増援としてきたのか、迷宮から出てくる魔導士たちは皆対水中専用の術式っぽいものを展開してそのまま浮上していく。
そう、浮上だ。
結界の中に閉じこもっている俺たちではなく、それよりも優先順位を付けて狙うべき存在が居る──そして、それが映っていた。
「『真海の主』様による大規模な術式。そして、それに抗う『必要悪』様と『覆魔殿』様ですか……どうして協力されているのでしょうかね?」
「──」
『『覆魔殿』はもともと、星の言うことは聞いたり聞かなかったり中途半端だったみたいだから。本人の行動原理が、『必要悪』と噛み合ったからじゃないかな? だって』
「……あー、つまり共通の目的のために力を貸しているということですか」
間違いなく『必要悪』に関しては、ここを守るという使命があるだろう。
だが、逆に攻める側で『必要悪』をもターゲットにしていた『覆魔殿』。
彼がそれでも、『必要悪』に協力している理由──おそらく俺だ。
自惚れでなければ、彼曰く俺の愚かな試みがどうなるかを知りたいのだろう。
問題は、水上で時間を稼がれていても出れないということ。
水の中は『真海の主』の領域……これはもう、無理ゲーじゃないか?
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