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DIY、偽装工作に走る
魔導世界密入 その32
しおりを挟む結界で『八大星魔:覆魔殿』を確保して、現在交渉中。
外部からもう一人、『界樹の神子』が干渉しているが……とりあえず無視だ。
「──なるほど、世界規模の大結界を。率直に申すならば、無謀としか言えんな」
「やはり、『覆魔殿』様でもそのような見解に至りますか?」
「求める理想が高過ぎる。外部からの強行ができぬ、単純故に困難だ。すでに知っているとは思うが、『愚かな賢者』を含め我々の術式はそう容易く対策されるものでは無い」
「……でしょうね」
実はこっそり、外側で攻撃をしている世界樹(?)の根っこに『SEBAS』が干渉、術式の解析を試みているのだが……これがかなり複雑らしい。
やはり、『愚かな賢者』の言っていた通り術者同士で競い合っている分、相手に術式がバレないように高度な隠蔽を行っているのだろう……そのうえで、性能も高いと。
「世界に絶対という言葉が通じぬのと同様、決して破られぬ秘策など存在しないのだ。また、そのようなものむしろ愚策だ。頼るモノがそれしかなければ、それが何らかの要因で失われた際に何もできぬと同じことだ」
「…………なるほど、貴重なご意見感謝いたします」
思わず感銘を受けてしまった。
たしかに、『覆魔殿』の言った通り。
結局、どこまで行っても対策の対策の対策の……と、やっていくしかないんだよな。
「──が、それでもやっておくこと自体は良いことだろう。私の領域でも、そういった試みは当然している……『愚かな賢者』など、特に蛮行を繰り返すのでな」
「あはは、目に浮かびます」
そもそも、術式を求めて冒険世界に突入してきたわけだしな。
同じようなことなら、すでにこの世界でもさんざんやっているだろう。
「それで何ですが……この術式、しばらく滞在して編んでみたのですがどうですか?」
「…………これは?」
「旧式ですが、考案した改良型の結界です。コスト度外視、安全面だけに注意を払った失敗作です」
「失敗作を私に見せるなど、本来であれば愚の極み……だが、これは面白い」
常人では扱えない術式、その理由はシンプルに消費コストが尋常では無いから。
俺は星の力を運用に回すので問題無いのだが、普通の人にそれはできないからな。
「ふっふっふ、休人がこの世界を訪れ今の時代は最低限のコストで最大限の結果を……というコンセプトの術式が主流となっている。だが『生者』、貴公の術式は何だ? とても面白い……子供の理想そのものだ!」
「えっと、褒めていただいているので?」
「ああ、愚かだと褒めてやろう! そして、それゆえに可能性を見いだせた! だが、これは私だけでは完成しない……結界を解け、協力してやろう」
なんて、口角を釣り上げた『覆魔殿』が見つめる先──そこには巨大な世界樹と、その洞で祈る女性が一人。
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