2,161 / 2,733
DIY、偽装工作に走る
魔導世界密入 その09
しおりを挟む絡んできた魔導世界のチンピラたち。
いかにも弱そうな風に見えているに違いない……実際、息を吹きかけるだけで死ぬような弱者だしな。
「へへっ、もう逃げ場はねぇぞ」
「まあ、この辺なら……大丈夫ですね」
路地裏の奥、チンピラたちに囲まれている俺は独り呟く。
彼らの目的は金……なんだろうが、それに従うつもりはさらさらない。
それでもすぐに撃退せず、わざわざ遠くに来たのには理由がある。
今は『SEBAS』に任せることができないので、自分でいろいろする必要があった。
まずは周囲にここで起きることを広めないための結界、その構築。
それが正しく作動するか、またしなくてもどうにかするために奥へ来たのだ。
「──『防音結界』、作動」
「! こりゃあ……結界術式! その魔装の力か!」
「さすがは魔導世界、こういった分野には優れているのですね──たかがチンピラ程度、でもね」
「……あ゛ぁ?」
結界の発生源は腰に下げた剣の鞘。
魔道具の『ソードデバイス』なのだが、こちらの世界では魔道具は魔装という分野に含まれている。
他世界の者よりも魔力的な才に富んだ彼らは、一瞬で俺の仕込みを見破った。
チンピラでもそのレベルなのだ、やはり公の場で堂々と使うのは難しいだろう。
「チッ、魔装使いか……そのちっせぇ魔力で自信たっぷりなのはそれが理由か」
「さて、どうでしょう。ああ、言っておきますがこれの効果はお分かりでしょう? もう逃がす気は、ございませんので」
「……言ってくれるじゃねぇか、おい。それはこっちの台詞だ! おいテメェら、やっちまえ1」
『うぉおおおお!』
ここで接近戦を行うのは数十人のうち二人ほど……まあ、魔導世界だしな。
彼らの大半は後方で何かの準備、術式の展開で遠距離から攻撃を行うのだろう。
とはいえ、彼らの目的は金品の強奪。
大火力でそれらを無為にするはずもなく、あくまで痛めつけるか……死んでもアイテムの回収ができるぐらいの威力だろう。
「まあ、すべてが無駄ですがね」
「「──うおっ!?」」
「さて、無力化していきますよ」
俺の手に[インベントリ]を経由して現れるのは、魂を斬る刃[モルメス]。
名前の一部にもある通り、医療器具であるメスに近い形状の小さい武器。
だが、それで充分。
死に戻りで彼らを物理的に擦り抜けたとほぼ同時、その刃は彼らを掠っていた。
「「────」」
「お、おい! それも魔装か……しかも、かなりの上物だな」
「分かりますか? いえ、分かりませんか。たしか魔装とは、魔を宿す物全般を指すのでしたね。でしたら違います──これは、神を宿しているのです」
「神……けっ、胡散臭ぇ。だが、効果だけは間違いねぇな。それさえあれば、俺たちもあの方に認めてもらえる! テメェら、何としてもアレを奪い取るぞ!」
『うぉおおおお!』
あの方、というのが非常に気になるな。
その辺も含め、『SEBAS』が調べてくれているだろうが……まあ、俺の方でも確認ぐらいはしておきますか。
0
お気に入りに追加
643
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
公爵令嬢はアホ係から卒業する
依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」
婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。
そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。
いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?
何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。
エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。
彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。
*『小説家になろう』でも公開しています。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる