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DIY、偽装工作に走る
密入開始 後篇
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魔導世界へ密入界!
もっとも警戒している転移の術式を使ってもらい、俺は新たな世界に辿り着いた──はずなのだが。
「あれ、ここは……」
「察しているとは思うが、ここは正式に言えば魔導世界では無い」
「あっ、良かったです……さすがに何も無いここがそうだとは思えませんしね」
「何も無いわけでは無いが、この辺りには置いておらぬな」
そう、俺が転移させられたそこには何も無かった……先ほどまで『騎士王』と居た空間に似ているのだが、こちらは真っ暗だ。
「直接乗り込んでは見つかる危険性が上がるからな。世界を渡る術と亜空を生み出す術式は別にして、改めて偽装を済ませた転移で向かうつもりじゃ」
「なるほど……たしかにそちらの方が、確実ですね」
転移に関する難易度は、やはり同じ世界内の方が低い。
場所によって差は生まれるが、それでも最高峰に世界間の転移が存在する。
直接世界を渡るのではなく、中継地点に乗り込めば多少は難易度が落ちるわけだ。
……まあ、飛行機で空港へ向かうなら、直接パラシュートで降りるより簡単だよな。
「ともあれ、ここからが本題じゃ。連中はそれぞれ独自の術式で警戒網を巡らせておる。世界をそのまま渡れば、『騎士王』のように感知して手の者を差し向けるじゃろうよ」
「あの、『愚かな賢者』様が占有する領域などは無いのですか?」
「無いな。その代わりに、儂は連中の誰にも属さぬ自由な者として認識されておる。何も持たぬ故、何も奴らからは奪われぬ。儂その者を奪えぬ限りはな」
「……まあ、ある意味では究極の防御手段かもしれませんけど」
創作物……というか現実でも起き得るが、自分のやらかしたことに関係者が巻き込まれるというアレ。
だが当事者が孤立無援なら、話は別。
周囲にいっさい被害が及ばない以上、敵対者も当人を狙う以外に報復行為をしても意味が無いわけだ。
「それで、私はこれからどこへ?」
「事前に説明しておくぞ。大陸や国は、そのすべてが連中の誰かが庇護下にしておる。世界のほぼすべて、連中が支配しておると言っても過言では無い。儂は気にしておらぬが、自由な場所など無いに等しいじゃろう」
「…………それでは、見つかりそうですね」
「うむ、故にここのような安全地帯をいくつか設けておる。空も海も大地も、連中のモノと化しておるが、それでも狭間に関してはまだ残されておるぞ」
そう言って、杖を地面に突きつける。
すると『愚かな賢者』の目の前に、空間の裂け目が生まれた。
「さて、行くぞ『生者』よ。これより先、油断はせぬことじゃ」
「……はい」
警戒を強め、『SEBAS』にも思念で指示を──さぁ、密入界だ。
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