虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、偽装工作に走る

密入準備 前篇

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 冒険世界 始まりの街

 強力な能力に対抗するには、こちらにも強力なナニカが必要になる。
 いたちごっこのようなものだが、ともあれ対策が必要となった。

「──ということで、術式の提供をまた頼みたいのだが?」

「……結界か。となると、『完星璧盾パーフェクトスターシールド』以上のものを望むというわけだ」

「そう、そのダサい魔術以上の」

「ダサ!? ……ふんっ!」

「あー、悪い悪い。ついいつも思っていたことがポロリと」

「…………ふんっ、ふんっ、ふんっだ!!」

 俺の持つ最上級の防御魔術、その開発者こそが万能の『超越者』である『騎士王』。
 ……ただし、そのネーミングセンスは厨二な少年レベルのものだ。

 彼女の術式を、『愚者の石』という術式保存が可能なアイテムでいつも貰っている。
 なので今回、必要になった堅固な結界の開発を求めようと思っていたのだが……。

「なあ、機嫌を直してくれよ。ほら、あそこで売る予定のお土産セットだ」

「…………ふんっ、ふんっだ!」

「あとほら、世界樹の実をドライフルーツにしたヤツ。賓客用のお土産に追加してみるつもりなんだが、味見にどうだ?」

「……ふんっ!」

 物を渡していくと、だんだん機嫌がよくなるのが分かる。
 トドメに果汁と蜜を固めて作った飴を渡すと、ようやく機嫌が回復した。

「こほんっ。私の最高の、とてもセンスのある! 術式以上の結界を求めているとのことだが……結論から言えば、あれ以上はこの世界で創ることはできない」

「…………つまり、この世界でなければ問題無いわけだ。たとえば、魔導世界とか」

「その通りだ。術式に条件付けをし、性能を高める。技術自体はこちらの世界でも可能ではあるが、本場は理そのものが魔に寄り添っているからな」

 魔導世界、まだ訪れたことの無い世界の一つで魔力関係に長けた世界だ。
 かつて見た『愚かな賢者』、『魔海の主』などが彼の世界の強者である。

「でも、俺は今いろいろと面倒な状態にあるが? 普通に行っても入国拒否になるだろうし、行ったら行ったで刺客を差し向けられることが確定だろ」

「だが、それでも行くこと自体が可能だというならば──行く以外の選択肢があるか?」

「──あるわけ無いだろう、行く一択だ」

「そう言うと思っていた。すでに、策は講じてある。準備はすぐに済む。『生者』、始めるか?」

 魔導世界に行けるならば、ぜひとも行って手に入れられるものをとことん得たい。
 まあ、確実に強者が出張ってくるが……それはそれで、勉強の機会だしな。

 俺は『騎士王』に応じ、その策とやらを行う場所へと転移される。
 ……そして、その場所で俺を待っていたのは──

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