虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、偽装工作に走る

第二回プレオープン反省会 前篇

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 休人たちを元の世界に送り返した。
 何やら企てていた者も居たようだが、そこは『SEBAS』の方が一枚上手。

 時間が掛かるように見せていた転移陣ではなく、隠蔽して事前に仕掛けていた転移陣を発動し──強制送還するのだった。

「第二回のプレオープンも無事成功だ。みんな、ご苦労様」

『皆、よくやってくれたな』

 風兎と共に住民たちを労う。
 少数精鋭だった『超越者』たちへの対応も苦労したが、やはり常にみられるほど数が多い休人への対応も大変だったはずだ。

 なので盛大に祝うことに。
 魔物たちも魔物たちで、祝うことは大好きだ……いやほら、そういう時ってだいたいご馳走が出てくるからな。

 そんなこんなで、魔物たちは人形や機械が次々と生み出す料理の虜になっている。
 だが俺や風兎など、代表者たちは卓を囲んで話し合いを行っていた。

「……さて、例の件についてだ」

『最後に何かをしようとしていた、休人のことだな』

「ああ、それについて調べてもらっていたわけだが……『SEBAS』」

《はい。結論を申しますと、彼の休人はこの世界に『印』を刻もうとしておりました》

『印……とは、要するに目印マーキングか。この場合だと、転移座標のことか?』

 対象に身力を刻むことで、いつでもその存在がどこに居る/在るのかが分かるようになる効果を持つ──それが印だ。

 今回の場合、印を刻んだ場所の座標をいつでも把握できるようになり、やり方次第で転移できるようになる。

『だが実際、転移は可能なのか?』

「いや、普通は無理だぞ。けどまあ、不可能じゃないことは、権能持ちの強い連中ならやりかねないだろう?」

『……聖獣様と同格、またはそれ以上の御方であれば可能だろうな。正攻法では、他に思いつかんな』

「そうそう、つまり特化した能力持ちならやりかねんわけだ。今回は印の『プログレス』持ち、それを利用して転移系『プログレス』が集団で乗り込んでくる……なんてことも、できないわけじゃないんだよな」

 転移系の能力は、休人の中でも何人か発現が確認されていた。
 ……楽に生きたい人の中には、どこでも行けるドアに幻想を抱くからだろうか。

 理由はともかく、そんな転移能力があるという話だ。
 幸い、距離や転移人数の制限がまだあるので、実行はできない……はず。

「能力を拡張・強化する『プログレス』、みたいなものも確認されているからな。いろいろと誤魔化す手段があるんだよな……」

《数値を改竄する『プログレス』、そのようなものも確認されています。能力の説明文を改竄し、距離を伸ばすことやパーティーの人数を減らすことで制限規定内に収めることも可能です》

「増やすも減らすも思うがまま、あるいはその逆でどちらかに特化することでかなりの変化を促すことができるか……いずれにせよ、組み合わせ次第で現状でもアイスプルへ侵入できるようになるかもしれないな」

 創作物の定番、圧倒的な強者に挑む弱者の集団……言い方はアレだが、まさに今の俺はそういう感じなんだよな──肉体のスペックに限れば俺が最弱だけど。

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