2,145 / 2,733
DIY、偽装工作に走る
第二回プレオープン反省会 前篇
しおりを挟む休人たちを元の世界に送り返した。
何やら企てていた者も居たようだが、そこは『SEBAS』の方が一枚上手。
時間が掛かるように見せていた転移陣ではなく、隠蔽して事前に仕掛けていた転移陣を発動し──強制送還するのだった。
「第二回のプレオープンも無事成功だ。みんな、ご苦労様」
『皆、よくやってくれたな』
風兎と共に住民たちを労う。
少数精鋭だった『超越者』たちへの対応も苦労したが、やはり常にみられるほど数が多い休人への対応も大変だったはずだ。
なので盛大に祝うことに。
魔物たちも魔物たちで、祝うことは大好きだ……いやほら、そういう時ってだいたいご馳走が出てくるからな。
そんなこんなで、魔物たちは人形や機械が次々と生み出す料理の虜になっている。
だが俺や風兎など、代表者たちは卓を囲んで話し合いを行っていた。
「……さて、例の件についてだ」
『最後に何かをしようとしていた、休人のことだな』
「ああ、それについて調べてもらっていたわけだが……『SEBAS』」
《はい。結論を申しますと、彼の休人はこの世界に『印』を刻もうとしておりました》
『印……とは、要するに目印か。この場合だと、転移座標のことか?』
対象に身力を刻むことで、いつでもその存在がどこに居る/在るのかが分かるようになる効果を持つ──それが印だ。
今回の場合、印を刻んだ場所の座標をいつでも把握できるようになり、やり方次第で転移できるようになる。
『だが実際、転移は可能なのか?』
「いや、普通は無理だぞ。けどまあ、不可能じゃないことは、権能持ちの強い連中ならやりかねないだろう?」
『……聖獣様と同格、またはそれ以上の御方であれば可能だろうな。正攻法では、他に思いつかんな』
「そうそう、つまり特化した能力持ちならやりかねんわけだ。今回は印の『プログレス』持ち、それを利用して転移系『プログレス』が集団で乗り込んでくる……なんてことも、できないわけじゃないんだよな」
転移系の能力は、休人の中でも何人か発現が確認されていた。
……楽に生きたい人の中には、どこでも行けるドアに幻想を抱くからだろうか。
理由はともかく、そんな転移能力があるという話だ。
幸い、距離や転移人数の制限がまだあるので、実行はできない……はず。
「能力を拡張・強化する『プログレス』、みたいなものも確認されているからな。いろいろと誤魔化す手段があるんだよな……」
《数値を改竄する『プログレス』、そのようなものも確認されています。能力の説明文を改竄し、距離を伸ばすことやパーティーの人数を減らすことで制限規定内に収めることも可能です》
「増やすも減らすも思うがまま、あるいはその逆でどちらかに特化することでかなりの変化を促すことができるか……いずれにせよ、組み合わせ次第で現状でもアイスプルへ侵入できるようになるかもしれないな」
創作物の定番、圧倒的な強者に挑む弱者の集団……言い方はアレだが、まさに今の俺はそういう感じなんだよな──肉体のスペックに限れば俺が最弱だけど。
0
お気に入りに追加
643
あなたにおすすめの小説
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
公爵令嬢はアホ係から卒業する
依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」
婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。
そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。
いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?
何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。
エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。
彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。
*『小説家になろう』でも公開しています。
何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~
秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」
妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。
ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。
どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる