虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、偽装工作に走る

第二回プレオープン その10

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 軽犯罪には寄生アイテムを。
 反省している旨を文字通り、見せつけさせることで済ませる。

「…………本当、多かったな」

 アレから軽犯罪が横行した。
 さすがに最初の事件を気にしてか、そこまで派手な事件は無かったものの、侵入が特に多かったのだ。

 さすがにスリやら恐喝やらは無かったのだが、そちらだけは異常に行われた。
 ……未知のエリアに行きたい、そちらの欲だけは抑制できなかったのだろうか。

 街に設けられた区画だけでなく、外壁を超えて外へ向かおうとした者が多かった。
 こちらは正式にオープン後は、きちんと手続きさえすれば通れるようにするつもりだ。

 ただ、今はまだ整備途中なのであえて規制している状態。
 ……フィールドの方は整備済みなので、一瞬見られても大丈夫なんだけどな。

「しかしまあ、これで終わりだ。時間になりましたし、行くとしますか」

 指令室に設置された魔法陣を潜れば、そこは何の変哲もない小さな家屋。
 そこから出れば人は誰も居らず、その間に隠蔽系の下準備をして移動を開始する。

 なお、家屋があるのは休人たちが挑んでいた進入禁止区域。
 この都市を守るため、いろいろな仕掛けが置かれているのだ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 時間になったということで、あちこち歩き回っていた休人たちも帰ってきた。
 ……その大半が、首から何らかの反省文が掛かれたプレートを提げているけども。

 お土産もいくつか買っているようで、中には木刀を握り締めているモノも。
 武器ではなく装飾具、という形なのでギリ合法という形だ。

「えー、皆さん。ご満足いただけたでしょうか……と言いましても、その惨状から察するにできてはいませんね。ですが、今回はあくまでもプレオープン。今後にご期待いただけますと幸いです」

「次はいつになるんだ?」

「未定ですね。ただ、事前に連絡の方を情報屋の方から行ってもらいます。今回と違い、いくつか条件を出すことにはなると思いますが……街の外、出られるようになっていますのでご期待ください」

 明確な日時などはあえて伝えない。
 なんというか、それはそれでジンリの方で何か企ててきそうだし。

 タクマから今回の参加者のみに伝えてもらうつもりだが、操られていた二人を含め何人か通じているヤツが居るようだ。

 不参加だった数人は直接的だとして、間接的なヤツが何人紛れているのやら。
 そんなわけで、後は彼らを転移陣に乗せて元の世界に送り返すだけ。

《旦那様》

「了解だ──それでは、また次の機会にお会いしましょう!」

 転移が展開した瞬間、何かをしようとしていた休人が一人。
 ……が、隠蔽してとっくに起動していた転移陣が先に発動し──帰還するのだった。

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