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DIY、偽装工作に走る
第二回プレオープン その08
しおりを挟む偽装都市の地下、そこには問題を起こした者たちを収容する『牢獄』が存在する。
自発的か誰かの仕込みか、目を覚まさない休人たちに俺は手を伸ばす。
「管理者権限、音声識別コード『────』実行」
宝石──『プログレス』に触れると、俺はそう呟く。
すると、『プログレス』から数字の羅列が浮かび上がり──切り替わる。
「緊急事態による閲覧の実行、認証開始」
管理者権限、『プログレス』の生みの親である俺に与えられた裏技。
それを用いることで、俺は他者のあらゆる履歴を辿ることができる。
ただし、そのままではいろいろと揉めるので一つの条件が。
それはこの認証で、相手が拒めばできなくなるという至って真っ当なもの。
……しかし休人たちは現在、何らかの要因で目を覚まさない。
ここで拒否が出るなら、それはそれで問題無いのだが…………うん、通った。
「つまり、完全にダメな状態か。思念での拒否も可能な仕様な以上、まさに緊急事態ってことになるな」
数字の羅列が意味のある文字に。
それは、休人たちが取ったすべての行動が記された[ログ]そのもの。
どんなスキルを使用し、どんな発言をしたのか……世界に示した行動のすべて、心中以外の情報が全部記載されている。
「ついでに、誰かに何かをされたっていう情報も見れるんだけど……あった、これだ」
俺が見つけたのは『???より『???』の干渉……抵抗に失敗しました』という一文である。
分からなくなっているのは、当事者が相手の認識を正しくしていないから。
もし名前を分かっていても、それが本当の名前じゃないなら表記は謎のままだ。
「『この内容は、対応するスキルを所持していないため非表示となります』と……耐性スキルのレベルが足りなかったか?」
だいぶ前に語ったが、特定のスキルを持つことで[メニュー]系のスキルは使い勝手が向上する。
先ほどの説明も、戦闘職で必要なスキルしか持っていなかった彼らだからこそ。
鑑定やら看破やら、あるいは欺瞞に関する耐性を持つスキルがあれば話は別だった。
「すでに起きたことだから、その辺を洗い直すのは難しいか……せめて目撃者、しかも相応のスキルの持ち主が居れば話は別だったかもしれないがな」
時間の流れとは不可逆なもの、少なくともただの人にそれを覆すことはできない。
彼ら自身の情報しか見れない以上、これより深くは探れないだろう。
「とりあえず、裏で誰かが何かを企んでいたことは確実だ。なら、対応も少しだけ優しくしておくか」
アイスプルからの帰還だけはできるようにしてやろう……うん、それとは別にいろいろ協力してはもらうがな。
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