虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,140 / 2,820
DIY、偽装工作に走る

第二回プレオープン その06

しおりを挟む


 エクリが必殺技を発動。
 そちらに意識を向けていた休人たちを、死角から小さな球体が撃ち抜いた。

「お見事、さすがはエクリだな」

 やったことは単純、“千変宝珠”でこっそり飛ばした闇属性の魔力を当てるだけ。
 必殺技の操作、対人戦を行いつつ緻密な狙撃まで成功させるのだから凄い。

『いえ、『SEBAS』様の補助があってこそです』

 それを言うなら、常時『SEBAS』の恩恵にあやかっている俺って……。
 まあ、元より『SEBAS』が居なければどうにもならないのだ、仕方あるまい。

「しかし、厄介な相手だな……結果は?」

《はい、どうやら精神干渉を受けていたようです。ただし、時差式の発動となっており、それ以前の感知は極めて困難となっていたようです》

「時限爆弾みたいなものか。で、その使い手はどうなんだ?」

《精神干渉自体は『プログレス』によるものではなく、また参加者の中に該当する『プログレス』の持ち主は居りませんでした》

 何者かが参加者に細工し、アイスプルに来た辺りで暴走するように能力を施した。
 だがその使い手は参加者には居ない……問題がややこしくなってきている。

「タクマには情報が漏れないよう、厳重に注意してもらうよう厳命したはず。契約もあるはずだが、それでも漏れた……やはり侮れないな、ジンリは」

 奴の協力者は多い、それこそ無意識であろうとも。
 たとえ自覚して無くとも、ジンリが動かせる手駒は多い……ネトゲ時代に言っていた。

「『重要なのは、その行動を当たり前だと思わせること』、だっけか? 精神操作の仕掛けは無自覚かもしれないが、アイスプルに関する情報を漏らしたのは無自覚かもな」

《すぐに[掲示板]を──》

「そっちじゃないと思うぞ。アイツは使える物は何でも使うヤツだし、たぶん普通のスレか[メニュー]由来じゃない能力なんかかもしれない。協力者が、タクマと同等以上に情報を持つヤツが居ると思われているはずだ」

 すでに一度は接敵しているし、間接的に何度も戦闘を行っている。
 俺が虚弱なのは丸分かりだし、そのうえで今までやってきたことから分かることだ。 

「分かる範囲でいい、とりあえず洗いざらい確認だ。ほぼ100%ジンリだろうが、そうじゃない可能性を調べてくれ」

《畏まりました》

「エクリ、彼らをデスペナに。アレを使うから『牢獄』へ送ってくれ」

『了解しました』

 俺の発言を受けた直後、エクリは彼らを闇で包み込み──殺す。
 ただし、周囲で見ている休人たちには見えないようデスペナ演出ごと呑み込んだ。

 代わりに偽装工作として、無意味な魔法陣が足元に展開される。
 まるでそれを使ったと錯覚させ、エクリもまた闇によってその場から消えるのだった。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~

秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」  妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。  ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。  どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

処理中です...