虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、偽装工作に走る

第二回プレオープン その02

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 アイスプル 偽装都市

 タクマに厳選してもらった休人たちを、アイスプルに転移させた。
 予定より人数が少なかったが……いろいろあったのだろう。

「はい、では皆さんにはこれを着けてもらいます。装飾具にはカウントされませんので、ご安心ください」

「……ちょっと待て、それって──」

 俺が見せたボタンサイズのアイテムを、どうやら誰かが鑑定したようだ。
 そして、何を言いたいのか察している俺はそのまま何食わぬ顔で説明を続ける。

「はい、いわゆる発信機ですね。現在、この都市は試験運用中です。なので行かれては困る場所、知られると困る場所がいくつかございます。それらを明確にするため、皆さんにはこれを持っていただきたいのです」

「一つ聞きたい、なぜそれを説明する? 言えば何をするのか、分かっているだろう?」

「そうですね、外したうえで行動するのは構いませんよ──ただし、相応の覚悟はしてくださいね」

 発信機は監視のためともう一つ、証としての役割を持つ。
 人形や機械たちによる識別、もしそれを持たないならば──

「不法侵入者には容赦をしない。これは我々の世界でも共通の事項でしょう」

「おいおい、ここはゲームの世界だぞ。それぐらい──」

「【盗賊】、【義賊】、【怪盗】などいくつか住居への潜入を補助する職業はございますが、そのすべてが合法ではありませんよ。決まりがあり、それに従わない。であれば、こちらも相応の対処に出ざるを得ません」

「チッ……」

 タクマが選んだ以上、問題を起こすことはさして疑っていない。
 資料によると、どうやらロールプレイの一環として言っているようだし。

 だが俺の発言は、彼らを通じてこれから訪れる者たちにも伝わる。
 そしてジンリにも──この世界には、明確な法があると。

「そして、今回は試験運用ですので皆さんお一人ずつに案内役の人形をお付けします。これは実際に運用後、有料のガイド役として考えておりますのでご協力ください。行き先など、お好みの場所などを学習していきます」

「えー、それっていろいろ個人じょーほーを取られちゃうってことー?」

「そうですね、AIがおすすめ情報を提供するものと同じだとお考えください。なお、行き先や購入物などは情報を取らせてもらいますが、それ以外の情報は終了後に破棄させていただきます。こちらはその契約書です」

 信用のため、契約書を用意してある。
 それをホログラムとして表示し、この場に居る者たちに見せていく。

「皆さんの発言、ステータスなどの情報、使用額などにこちらはいっさい関与しません。その旨がこちらの書類には記載されております。後ほど書類にサインをしていただいた方から、街をお楽しみください」

 なお、『超越者』連中にこれを行わなかったのは気を損ねないように。
 ……あと小細工がいくらでもできそうなので、直接応対したわけだ。

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