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DIY、偽装工作に走る
第一回プレオープン その08
しおりを挟む仙人たちの里で行われている日常、その一端を知ることになった。
トップの二人は日夜、己の力を高めてぶつかり合っているようだな。
「くらえーー!」
「甘いな──『鍛造錬産』」
さて、俺と『闘仙』の模擬戦は終了。
舞台は一瞬で元通りになり、綺麗になったそこを別の者が使っている。
一人は『白氷』、好き放題力を使えるということで楽しんでいた。
そしてもう一人は旧『錬金王』、どうやら何かを試しているようだ。
彼女は『白氷』が生み出す吹雪を、その手にした翠玉色の板状のアイテムを操作して防ぐ──『アルケミア・タブレット』、それこそが彼女の『プログレス』だ。
かつて『超越者』だった彼女も、今は弟子にそれを譲っている。
過去の経験を『プログレス』は引き継ぎ、彼女に相応しい能力をもたらした。
彼女の『アルケミア・タブレット』の効果は、錬金術に関する情報の保存と確率操作。
要するに一度作った物は再現性がある限り何度でも、そして確実に創り上げられる。
かつて生産世界の休人が俺に見せた錬産術も、彼女に掛かればあっという間に解析されて新たな武器と化した。
「『超越者』には扱えない、もう一つの権能か……強力無比である代わりに誰が継承しても同じ能力になる『超越者』と、果たしてどちらが優れているのだろうな」
俺の隣でそんなことを呟く、『超越者』最高にして最強の『騎士王』。
多種多様な『プログレス』が生まれているものの、まだ『超越者』には及んでいない。
言うなれば、『超越者』は得ることが難しい代わりにいきなりレベルマックス。
対する『プログレス』は、レベルは一からだが代わりに無限の可能性を秘めている。
いちおう『超越者』も、条件次第で新たな派生効果を発生させることはあるが、それでも個人の資質などは関係なく、あくまでも星の求める理想を体現するための力だ。
「『白氷』は種族、職業、そして権能すべてが噛み合った『超越者』の中でも秀でた存在だ。しかし、多少身を弄っているとはいえ普人であった彼女がこうも食らいつくことができるとは……末恐ろしい物だ」
錬金を極め『錬金王』となった彼女は、すでに人の身を止めていた。
いろいろとあり、俺も協力した万能薬の影響でその異常さは高まっている。
傷ついた体は瞬時に癒え、並大抵の状態異常はほとんど無効化。
膨大な量の氷雪を凌ぐため、展開した錬産術で消耗する魔力もまた一瞬で満ちていく。
いかに相手が『白氷』──雪の妖精にして吹雪の姫、大気中の水分を自在に操る実力者であろうと、かつて人であった身で対等に戦えているのは異常だ。
「生産職、そして『錬金王』であろうと力のみでここまで戦えるのだな」
「それに関しては純粋に『錬金王』さんの努力の結果です。もちろん、生産世界の技術を私に教えてくださったある休人の方のお陰でもありますが……」
「『超越者』が何を超越しているのか、分からなくなる光景だな」
まあうん、リアルに剣の丘とかやられるといろいろとな……俺もやったけど。
さすがというかやはりというか──分かってるな!
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