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DIY、偽装工作に走る
第一回プレオープン その06
しおりを挟む高級路線の宿と一般向けの宿を紹介した。
ほとんどの者はその設備そのものに関心を抱いていたが、そうではない者も中には。
「どうですか、『騎士王』さん」
「……『生者』、この世界は何を目指しているのだ」
「何を、と申されましても。ご存じの通り、ただ失名神話の布教のためですかね」
「…………そのためだけに、これほどの街を作り上げるとはな」
いろいろとバレているようだが、その辺は織り込み済みなので気にしない。
向こうも向こうで、バラしたところで意味は無いと分かっているだろう。
「高い技術、快適な環境、やり方次第では死ぬまで苦労をする必要も無い……ここは理想郷に成り得るだろう」
「かもしれませんね。より上を目指さず、現状で満足する……それは確かに悪いことかもしれませんが、ある種の目的として多少の努力をしていただければ充分です。あとはそこに、神々への祈りさえあれば」
「──本当に、恐ろしい男だ」
俺自身はそこまで把握していないが、いろいろと『SEBAS』は考えているようだ。
まあたしかに、世の中には苦労をせずに楽だけしたいという人間はいくらでもいる。
俺だって、ルリが居なかったらそうなっていたかもしれないし……。
そんな連中でもやっていける、理想郷であり失楽園──それがこの偽装都市だ。
現状では予定していないが、定住するならば相応のノルマはあるとのこと。
また、渡航は一定期間で強制退場の対象になるので、粘るならこれにも条件がある。
各世界でそれぞれ目指すモノはあるかもしれないが、少なくともここアイスプルにはそういった厳格なものは存在しない。
だからこそ、比較的緩く整えられたこの偽りの街並み。
彼らはただ祈ればいい……盲目に、塗り固められた虚構の中で、なんてな。
◆ □ ◆ □ ◆
一度全員を集めて、向かったのはドーム型の施設。
スポーツも可能だが、やはりこちらの世界での用途といえば──
「腕は鈍っていないようだな……」
「私自身の力ではありませんので。いついかなる時でも、教わった動きをなぞるように再現してみせましょう」
「そうか……ならば、少し速度を上げるぞ」
ドームの上に配置された舞台。
俺とそこで拳を交えるのは、異端の仙人である『闘仙』。
ドームというかコロッセオ、天井も開く仕様なのでほぼそちらの用途で使われるはず。
案内はすでにしていたのだが、当人の希望もあって再び戻ってきた。
「さぁ、鍛錬の成果を見せてくれ!」
「……してないんですけどね」
とはいえ、新技も考えてくれているだろうからこちらとしてもありがたい。
他の観戦者たちも、できれば何か見せてほしいなぁ。
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