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DIY、偽装工作に走る
第一回プレオープン その01
しおりを挟む冒険世界 始まりの街
アイスプルに新たな大陸を、そして都市を築いた俺と住民たち。
人化をして来訪者を迎え入れる準備をしたのだが、まず最初に行うのは──
「って、やっぱり居るし」
「むっ、『生者』か……ちょうど今、退屈をしていたところだ」
「ついさっきまで居なかったはずだが?」
「言っただろう、ちょうど今と。さぁ、業務に追われ疲れた私を楽しませてくれ」
屋台で俺を待っていた女──『騎士王』に対し、軽口を叩く。
この程度ではビクともしないことは百も承知、とりあえずは普段通りに振る舞う。
「悪いが、新作らしい新作はまだ準備して無いぞ」
「何だと!? 普段、いったい私がどれだけ期待をしているか分かっているのか!?」
「知らん知らん。国と食べ物、どっちが大事か……って訊いたらろくでもない結果が出そうだから言わないけど、いろいろとこっちもやることがあったんだよ」
「…………ふむ、何やら真剣な話のようだ」
表情などを変えたつもりは無いが、何かを察知したらしい『騎士王』。
先ほどまでの腑抜けた顔を止めると、王に相応しい風格を放ち尋ねてくる。
「わざわざそのやることがある中、ここに来たということは我に何か話すべきことがあるということで相違無いか?」
「そうですね。端的に申しますと──星に、私の住む世界を観光しに来てみませんか?」
「…………今なんと?」
「どうせ調べは付いているのでしょう? 私の星、【救星者】の住まう世界アイスプルへ貴女様を招待したいのです。というか、時々話題に出していましたし……そろそろ、良いかと思いまして」
星は意思を持つ。
それはすでに知っていたし、生産世界でも刺客だった『万象戯画』からそれらしき話を聞いている。
ならば冒険世界は? ──当然あるはず。
そして、星が認める最高の存在『騎士王』がそれを知らないはずがなく、また情報のやり取りをしていないわけがない。
半ば勘ではあるが、これまでの出来事を考えると割と当たっているだろう。
そうでなくとも、俺が常にこの世界に居ないということはバレているはず。
「そうか……それで、わざわざこの時期に招く意図は?」
「特にございませんね。ただ、こちらの準備が整ったということでして」
「準備……侵入者を迎撃するか?」
「いえ、おもてなしですね。なのでまず、実力と権威のある貴女様にぜひとも視察をお願いしたく……名物料理もございますよ?」
真面目モードの『騎士王』ではあるが、人格が丸っと切り替わったわけでは無い。
事実、最後の発言に一瞬だけ反応した……『SEBAS』じゃなきゃ見逃していたな。
「どうでしょうか、貴女様の都合が良い日にぜひとも。お国の方へは、こちらからご一報入れさせてもらってもよろしいのですが」
「……一つ確認しよう。これは視察、つまりは──」
「はい、公務──仕事です。たとえどのように振る舞っていただいても、対外的には仕事という認識ですね」
「…………そう、だな。日頃、こちらの借りもあまり返していなかった。私一人の身で良いというのであれば、多少の無茶はしても受け入れるべき、か」
何というか、だんだんと素が出てしまっている『騎士王』。
口が緩むのを抑えながら、一先ず魔道具で『騎士王』の御付きに連絡を取るのだった。
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