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DIY、冒険の地に向かう
覚悟の試練 後篇
しおりを挟む『──認めよう。お前は『超越者』に値する者であると』
膨大な時間を費やし、まずは眷属的な存在に打ち勝った。
……自動回復系の能力を、神様に土下座して頼んで外してもらったよ。
それから地道に一ダメージずつ与えていって──どうにか倒せた。
まあ、他にもやることはあったから、ログアウト以外でここからは出ることはなかったけどな。
あるときはダメージを与え、あるときは別のことを……そうしていろいろとクエストに従ってこなしていった結果……ついに、クエストが終わったのだ!
「あっ、伏字は超越だったんだ。まあ生と死を冒涜するんだから、何かを超越しろ……そういうわけなのか」
『結局、お前は何も成長しなかったな。せめて有効なスキルでも習得してくれれば、より早く終わるのかもしれなかったのだが』
「……唯一レベルアップしたことのあるスキルを、ここでは使えなかったからな。ただただ積み重ねていくしかなかったじゃないか」
生産するタイミングなんて、与えられるはずもなかったからな。
神様らしく俺のスキルのことを知っていので、生産にしか使えないスキルであることだけは自分の口から言っておいた。
『それもまた、試練の一つだ。称号をその結果幾つか増えたのだろう? お前のその無量大数に等しい死も、決して無駄ではない』
「ハァ……。もう格上相手でも恐怖を感じなくなったじゃないか。死の恐怖を感じない生き物は、いずれロクなことにならなくなるって聞いたことがあるぞ」
『そうだな。己が身の限界を知らず、ただただ足掻くその姿は確かに危険だ。……こちら側で擬似的に死の恐怖は感じられるようにしておこう。それで、危険を感じ取ってくれ』
「あっ、でも、俺のステータスに合わせた危険とかは勘弁してくださいよ。常時危険を感じ取ってはさすがに生活ができない」
それこそ、ストレスで発狂したくなるぐらいに警鐘が鳴らされる気がする。
『……そうだったな。分かった』
どこからかフワフワと闇色の球体が飛んで来て、俺の体の中へと入っていった。
「この色と言い、現れた眷属と言い空間と言い……やっぱり死に関する神なのか?」
試練で現れた眷属は、骨や幽霊などの死霊系が多かった。
時々鎌とローブを装備した奴も出て来たので、恐らく当たりだろう。
『正解だ。真名を告げるか姿を見せるとお前が一瞬で蒸発するから止めておくが──お前の思う通り、私は死を司っている』
「まあ、このクエストが生と死の冒涜で発生したのなら、普通そうだよな。分かっていたけど、最初の方はビビりすぎて、中盤はもう神様に慣れちゃったから訊くのを忘れてた」
死神、か……。
死神って別に問答無用で魂を狩っていくだけの存在じゃないんだよな。
まあ、命の管理人って意味では間違っていないが。
溜まっていた言いたいことを神様に話していると、突然神様が言う。
『──そろそろ時間だ。お前は元居た場所に戻ることになろう』
「クエストが終わったからか?」
『そうだ。本来この場所は、私の眷属か死者しか存在できない場所。お前のような者がいてはいけない場所だ。今までは要請の力もあるから私が保護をしていたが、もう私がお前の保護をすることはない。要請に従い、この場を去ってもらう』
「……そうか。神様と居たこの長い時間も、俺は嫌いにはなれなかったよ」
『私も……いや、何でもない。それより時間だ。そこにある転送陣で早く行け』
「分かった……ありがとうな、神様」
そうして転送陣の上に乗り、俺の体は光に包まれてこの場から消えていく。
『お前は自分をどう思おうが、他の神はお前の『超越者』としての証を本物として見てくるだろう。それが何を示すか……』
最後にそんな不吉な言葉が聞こえたが、既に転送寸前であったため、俺には反論をすることもできなかった。
──いや、俺は弱いから何もできないよ!
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