虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,119 / 2,831
DIY、偽装工作に走る

都市計画 前篇

しおりを挟む


 都市を建設する、そんな壮大な計画でありながら三日でできると判明。
 とはいえ、それは他者の力を借りねばならないようで──

「はーい、休憩にしようかー!」

『!!』

「はいはい、並んで並んで。全員分、お代わりを含めてたっぷり用意してあるからなー」

『こら、ちゃんと並べ! あっおい、急に撫でるでない!』

 一仕事を終えた魔物たちが、俺の下に集まり並べられた料理に手を伸ばしていく。
 途中、整理を担当していた風兎が叫んでいた気もするが……まあ、気のせいだろう。

 魔物たちの好物である果物や野菜をメインとし、作り上げた料理の数々。
 そうではない個体用の品も並べており、皆それぞれ満足のいく食事となっていた。

「はーい、休憩終わり! それじゃあ、みんなお願いなー!」

『!!』

 魔物たちは食事を終え、再び作業に戻る。
 巨大な魔物たちは石材や木材を運び、小柄な魔物たちはそれらに加工を加えていく。

 ただ運んで技術的に加工する……だけではない、そこには魔物ならではのやり方も。
 火を吹き溶解液を吐き、風で飛ばしては闇が呑み込みまた別の場所へ。

 こちらの世界なら人族でもまあできなくはないだろうが、普通ならできない方法。
 アイスプルだからできること、そんな建築方法に挑んでみた。

「詳細な鑑定や解析なら分かるかもしれないし、:DIY:みたいに情報を暴けるスキルがあればいいのかな? 実際にやっておけば確定で出せるし、こうして時短にもなる」

 すでに建物自体はほとんどが出来上がっており、細やかな作業をするのみ。
 ──ここまでで一日ほど、残された二日は俺が担当する予定だ。

「インフラは……まあ、原人用の施設にだけ用意しておけばいいか。休人はどうせ、ベッドさえあれば[ログアウト]するし」

 どこでも[ログアウト]自体は可能だが、安全地帯で行うことで回復が図れる。
 なので休人のほとんどは、効率厨であろうと安全地帯で[ログアウト]を行うのだ。

 灯りや火などは魔道具ですぐに配置可能だが、水道関係はそれなりに時間が掛かる。
 休人たち用に決めた建物には、あえて入れずとも良いだろう。

「『SEBAS』、進捗は?」

《順調ですね、進捗率80%。私の予想を遥かに超えた速度で進んでおります》

「残った20%も見る限り、そろそろ終わりそうだしな……おっ、風兎」

『──間もなく終わるぞ。それで……これからどうするつもりだ?』

 魔物たちの総監督をしてくれている風兎。
 一部の魔物がこちらに来ることになったので、その調査も兼ねているらしいが……その関係で聞いてきたか。

「俺はインフラ関係だな。今の住民も含め、不満が出ない程度には環境を整えていかないといけない。その間に、この街での過ごし方なんかを──」

「──私がご説明いたしましょう」

『セバヌスか……ならば安心だな』

 なぜかこちらを一瞥して言う辺り、俺に信用や信頼なんかは……いや、俺が頼れないということ自体は信頼していそうだな。

 俺との接続を行っている『SEBAS』だが、同時にセバヌスの体を動かしてもいる。
 そうでなくても会話は成立するのだが、やはり気分などもあるのだろう。

「ご安心を。『セバスチャン』の効果も向上しまして、他者への指導などに補正が入るようになりました。旦那様の決意が、私の能力にも影響を及ぼしたようですね」

「……そうか、それは何よりだ」

 詳細は分からないが、どうやら更なる成長の余地があったらしい『SEBAS』。
 ……うちの完璧執事は、いったいどこに行こうとしているのやら。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

てめぇの所為だよ

章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

処理中です...