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DIY、偽装工作に走る
都市計画 前篇
しおりを挟む都市を建設する、そんな壮大な計画でありながら三日でできると判明。
とはいえ、それは他者の力を借りねばならないようで──
「はーい、休憩にしようかー!」
『!!』
「はいはい、並んで並んで。全員分、お代わりを含めてたっぷり用意してあるからなー」
『こら、ちゃんと並べ! あっおい、急に撫でるでない!』
一仕事を終えた魔物たちが、俺の下に集まり並べられた料理に手を伸ばしていく。
途中、整理を担当していた風兎が叫んでいた気もするが……まあ、気のせいだろう。
魔物たちの好物である果物や野菜をメインとし、作り上げた料理の数々。
そうではない個体用の品も並べており、皆それぞれ満足のいく食事となっていた。
「はーい、休憩終わり! それじゃあ、みんなお願いなー!」
『!!』
魔物たちは食事を終え、再び作業に戻る。
巨大な魔物たちは石材や木材を運び、小柄な魔物たちはそれらに加工を加えていく。
ただ運んで技術的に加工する……だけではない、そこには魔物ならではのやり方も。
火を吹き溶解液を吐き、風で飛ばしては闇が呑み込みまた別の場所へ。
こちらの世界なら人族でもまあできなくはないだろうが、普通ならできない方法。
アイスプルだからできること、そんな建築方法に挑んでみた。
「詳細な鑑定や解析なら分かるかもしれないし、:DIY:みたいに情報を暴けるスキルがあればいいのかな? 実際にやっておけば確定で出せるし、こうして時短にもなる」
すでに建物自体はほとんどが出来上がっており、細やかな作業をするのみ。
──ここまでで一日ほど、残された二日は俺が担当する予定だ。
「インフラは……まあ、原人用の施設にだけ用意しておけばいいか。休人はどうせ、ベッドさえあれば[ログアウト]するし」
どこでも[ログアウト]自体は可能だが、安全地帯で行うことで回復が図れる。
なので休人のほとんどは、効率厨であろうと安全地帯で[ログアウト]を行うのだ。
灯りや火などは魔道具ですぐに配置可能だが、水道関係はそれなりに時間が掛かる。
休人たち用に決めた建物には、あえて入れずとも良いだろう。
「『SEBAS』、進捗は?」
《順調ですね、進捗率80%。私の予想を遥かに超えた速度で進んでおります》
「残った20%も見る限り、そろそろ終わりそうだしな……おっ、風兎」
『──間もなく終わるぞ。それで……これからどうするつもりだ?』
魔物たちの総監督をしてくれている風兎。
一部の魔物がこちらに来ることになったので、その調査も兼ねているらしいが……その関係で聞いてきたか。
「俺はインフラ関係だな。今の住民も含め、不満が出ない程度には環境を整えていかないといけない。その間に、この街での過ごし方なんかを──」
「──私がご説明いたしましょう」
『セバヌスか……ならば安心だな』
なぜかこちらを一瞥して言う辺り、俺に信用や信頼なんかは……いや、俺が頼れないということ自体は信頼していそうだな。
俺との接続を行っている『SEBAS』だが、同時にセバヌスの体を動かしてもいる。
そうでなくても会話は成立するのだが、やはり気分などもあるのだろう。
「ご安心を。『セバスチャン』の効果も向上しまして、他者への指導などに補正が入るようになりました。旦那様の決意が、私の能力にも影響を及ぼしたようですね」
「……そうか、それは何よりだ」
詳細は分からないが、どうやら更なる成長の余地があったらしい『SEBAS』。
……うちの完璧執事は、いったいどこに行こうとしているのやら。
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