虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,116 / 2,828
DIY、偽装工作に走る

離島計画 前篇

しおりを挟む


 過保護な風兎は説き伏せられ、妥協の結果受け入れられることになった偽装大陸。
 とりあえず、住民の中でも人化できる魔物たちには手伝ってもらうことに。

「──さて、ここでいいかな?」

《ここは『N50』。周囲には何も存在せず、ただ海のみが広がっておりますね》

「自動モードで海は広げていたからな。お陰で海産物もいろいろと採れるようになっているし、地域ごとの変化とかもいろいろ試していたんだんだが……しょうがない、この辺は諦めるとしますか」

 海以外に何も存在しない場所、しかし海の中にはあらゆる可能性が存在する。
 魔力が存在し、魔物が居る世界で俺は──海産物の養殖(?)を行っていた。

 自然という天然でやっているので天然物かもしれないが、その辺はどうでもいい。
 今回重要なのは、膨大な区画を使っていたその実験場を再利用するということだ。

「昔は科学的にいろいろとやってはみたが、今回はな──“統星掌握”」

 それは【救星者】の職業スキル、自身の職業に手を付ける“職業系統樹”と異なりアイスプルの管理者として相応しい初期能力。

 効果はシンプル、星の現状から過去、そして未来を把握できる。
 なお、あくまで『星の』なので生物が干渉した場合などは別だ。

 要はシミュレーターとしても利用可能で、今回はその機能を使用。
 何も無いこの海に島を作り上げ、不自然ではない形で維持する──という想定を行う。

「…………高い」

《すべてをSPで賄うのであれば、創造から環境調整といった行為に相応のポイントを消費することになります》

「だよな……“時貨専金”」

 SPの無駄遣いは避けたいので、星の改革に使えるもう一つの手段──【大富豪】の職業スキルを発動する。

 算出されていたSPの消費値が、異なる数値に書き換わっていく。
 それは金額、最後にこの世界の単位で表示される膨大な桁数の数字だ。

「──うん、これならイケるな」

 先ほどまでの悩みはどこへ行ったのやら。
 気分よく押せるようになったボタンをタップした瞬間、星が激しく胎動する。

「ほんと、金だけならいくらでも……現実で言いたく…………はならないな、うん。だからルリ、頼むから気づかないでくれ」

《旦那様、問題ありません》

「……ふぅー。言霊って怖いからな、ガチで起きかねんよ。まあともあれ、だんだん形になってきたな」

 ルリに掛かれば、それこそ一本の藁で巨万の富ぐらい得られるだろう。
 そうでなくとも、投資をするだけで一生困らなくなるに違いない。

 なんてことを話している間に、海中から何も無い大地が出現する。
 先ほどまで青一色だったはずの世界が、今度は文字通りの土色に切り替わっていた。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】聖女ディアの処刑

大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。 枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。 「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」 聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。 そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。 ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが―― ※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・) ※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・) ★追記 ※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。 ※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。 ※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。

処理中です...