虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、偽装工作に走る

偽装計画 前篇

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 問題はいくつかあったものの、とりあえず職業システムはアイスプルにも導入された。
 まだまだ謎の多いEHO、それそのものを暴くことも目的の達成に繋がるかもな。

「アイスプル限定の職業は……やっぱり無いのか。あればぜひとも就いて、『失名神話のお陰で就けました!』みたいな宣伝文句が使えたのにな」

《その場合、出自を問われることになるのでは? 信仰をしようと、アイスプルに来る必要がありますので》

「……それもそうか。いっそのこと、脱出不可能にしたうえで人族来訪用の都市でも用意しておいた方がいいかもしれないな。これ、一度考えたことあった気がするけど」

 残念ながら、水晶に触れてみても新規の職業は見受けられなかった。
 この世界特有の職業、他の休人では得られないものというのはやはり興奮するのだが。

 無い物は仕方ない、だがいづれの可能性を考慮しての話だったが……うん。
 すでに現代風の都市自体は、ノリで建ててあるのだけれども。

 人型の住民が俺も含めて指の数ほどしか居ないし、彼らもそこをあまり使わない。
 ルリたちを招いた時なども、質素な建物を使いたいと言われてしまったな。

「…………背に腹は代えられない、か。創造神様たちは何も仰らなかったけど、俺が独占しているだけじゃダメかもな」

《旦那様……》

「ただこれは、正直賭けだ。善意で協力してくれる者も居るだろうが、必ず悪意も入り込む。それにどう対応するか………………ルリに頼るのだけは、最終手段で確定だが」

 因果が捻じ曲がるとか、その分の反動がとかそういう話ではない。
 さすがにそこまで頼り切りでは…………夫としてどうかと思うので。

「それに、ここでなら最初から失名神話をメインの宗教として広げていっても全然問題無いだろうからな。まずはそうだな、これを先住民に確認することからか」

  ◆   □   ◆   □   ◆

 と、そんなこんなで有識者たちを集めてのアイスプルの未来を決める会議が始まった。

『──反対だ』

 内容の説明を終えた途端、そう告げたのはピスピスと息を漏らす一匹の兎。
 彼こそがこの世界の住民、その過半数の支持を得ている守護者──風兎だった。

『隔離をする、その案は良いだろう。しかしその程度で、飽くなき探求心を封じ込めることができるのか?』

「……まあ、無理だろうな。いちおう転移阻害は準備するし、ルール的に背いたらいかなる処罰も合法ということにはしておくけど。それでも、行きたいと思ったら行くのが休人のさがみたいなものだし」

『ならば、やはり反対だ。民たちに危険が及ぼす存在を招くのは』

 至極真っ当な意見であるし、今までの俺もそういった風に考えている。
 実際問題、やり直せる休人ならば何度でも挑むだろう……うーん、やはり難しい。

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