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DIY、捌いて裁く
懇神会 その23
しおりを挟む英霊たちが用いる固有武装──傑物。
本来の意味とは似て非なるそれは、彼らの成し遂げた業に合わせた力を発揮する。
高い戦闘技術だけでなく、本来では秘匿されている傑物の能力も解析できる……うん、やはり観戦に徹して正解だったな。
「おっ、ヘラクレスの番か……物凄く辺りを見渡しているけど」
《おそらく──》
「いや、言わなくても分かるからイイや。道理で主神クラスが、どこもかしこもニヤニヤしているわけだ……行きませんからね」
そう呟くと、全員つまらなそうな顔を浮かべてくる……地獄耳ならぬ神耳は厄介だな。
前回戦った借りもあるので、本気のヘラクレスと俺をぶつけたかったのだろう。
「諦めてくれたか…………って、何だか様子がおかしいな」
《旦那様が居ないからこそ、力を示す必要ができたのでしょう。傑物、そして開帳を使うと思われます》
「前者はともかく、後者までか……相手の人大丈夫かな?」
神の力、その一端を用いる『開帳』。
ヘラクレスの場合、十二の試練に関する事象を傑物である棍棒に宿していた。
前回はそれ以外のことはしてこなかったのだが、今回は傑物としての棍棒の使い方もしてくるのだろうか。
「始まった……相手はたしか、顧客だな」
「『プログレス』をご購入しておりましたので、そちらとの組み合わせも期待できます」
「ルリが『プログレス』と開帳を両方使える以上、できなくはないんだよな…………さすがの守護神も、不可能を強制的に可能にすることはできないだろうし」
……できなくもなさそうなのが問題だが。
開発者として、今までのオンゲーの運営とは違うところを証明したいんです!
「たしかあの人は……そう、槍使いだった。発現させた『プログレス』は?」
《『ドリフトドリル』、装備を回転させることができます》
「使う人によってはハズレ扱いかもしれないけど……うん、当たりだな」
遠心力は力になる。
ヘラクレスが振るう凄まじい威力のこん棒による一撃を、エインヘリヤルの槍使いは回転させた槍で弾いていた。
槍の回転を制御しつつ、もっとも棍棒を弾くために力を使わない場所に槍を置く。
後は回転する力が自動的に棍棒を弾き、余裕を持って攻撃に移れる。
「とまあ、あんな風に戦えるわけだが……アレの再現って可能か?」
《単純に回転させるだけでなく、その速度も調整しているようですね。少し時間を掛けることになりますが……》
「できることは何でもしておきたい。とりあえず、やってみてくれ」
《畏まりました》
なんて会話をしている間も戦闘は続く。
どうやら佳境なようで──お互いに、強力な技を使いだす。
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