2,099 / 2,752
DIY、捌いて裁く
懇神会 その18
しおりを挟む観戦しかできなくなった俺は、決着の時をただ眺めていた。
巨剣を振るう俺(『SEBAS』)と、雷の両手斧を振るう[クノッソス]の衝突だ。
結果、迷宮の不壊性すらも突破した膨大なエネルギーが外部に漏れだす。
局地的に展開していた深海フィールドも、同時に崩壊していく。
「──っと、戻りましたか。結果は……こうなりましたか」
『……、…………』
俺の方は死んでリセットし、心身ともに元通りだが……[クノッソス]の方はそうなるわけもなく。
荒い息を吐きながら、どうにか整えているようだ──その息が俺を殺しているのは、ご愛敬だろうか。
「お互い、満足の行く戦いであったかと。これならばきっと、神々もお喜びになられることでしょう」
『────』
そう、どちらかが死を迎えるまで戦い続ける必要は最初から無かった。
これはあくまで余興、ここに来た理由もあくまで英霊たちの処罰を決めるため。
……俺は死んでも続いていたし、英霊たちも迷宮をとっくに脱出しているようだが。
そういうことは気にせず、[クノッソス]の前に立ち結界で眼前へ向かう。
「私は貴方を討伐しませんしできません。ですが、どうか覚えていてください。貴方はこの私──『生者』にとって、友であると」
『──』
「ツクル、それが私の名です。願わくば、貴方に再び出会う日が会うことを」
『──、──────ッ!!』
突然、[クノッソス]が迷宮中に轟く声を上げる。
そちらを見てみると、口角を釣り上げて何やら笑っている……ように見えた。
実際にどう考えているのか分からないが、友と思えてもらえたなら嬉しい限りだ。
──いつか来る英勇が、彼を殺すその時まで……俺は彼の友を名乗り続けよう。
◆ □ ◆ □ ◆
その後、懇神会場に戻された俺に向けられたのは拍手喝采だった。
やはり神々もこの余興には満足してくれたようで、多くの方々から声を掛けられる。
英霊たちの中には戦いたいと声を上げる者も居たが、それらは神々が止めていた。
……ただまあ、また次の機会にと約束を取り付けられてしまったが。
「──やぁやぁ、人気者だね」
「! これは……創造神様、申し訳ございません」
「いいよいいよ、僕も鼻が高いよ。君という素晴らしい信者が居てくれて、お陰で僕たちの株も爆上がりだよ」
「お褒めいただき、光栄にございます」
拙い敬語を駆使してはいるが、やはり創造神様の威光が凄い。
そう評することしかできない自分が恨めしいが、ルリに匹敵する存在感は久しぶりだ。
「──そうだね、君の奥さんは特別だよ。あの子には……ちょっと敵わないかもね」
「! も、もうし──」
「いいんだ、こればかりは仕方がない。それに、君の口からそれだけは聞かなかったことにしないと。君の奥さんは僕も認めるぐらい凄い子、そう考えておけばいいよ。もっと気楽に、口調なんかもね」
「あ、ありがとうございます」
会が始まってから顔は合わせていたが、きちんと話す機会には恵まれていなかった。
創造神様──俺のEHOにおけるこれまでに大きく関わる存在……恩人ならぬ恩神だ。
0
お気に入りに追加
645
あなたにおすすめの小説
催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~
山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。
与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。
そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。
「──誰か、養ってくれない?」
この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。
異世界行ったらステータス最弱の上にジョブが謎過ぎたからスローライフ隠居してたはずなのに、気づいたらヤバいことになってた
カホ
ファンタジー
タイトル通りに進む予定です。
キャッチコピー
「チートはもうお腹いっぱいです」
ちょっと今まで投稿した作品を整理しようと思ってます。今読んでくださっている方、これから読もうとしていらっしゃる方、ご指摘があればどなたでも感想をください!参考にします!
注)感想のネタバレ処理をしていません。感想を読まれる方は十分気をつけてください(ギャフン
神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜
FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio
通称、【GKM】
これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。
世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。
その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。
この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。
その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…
微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。
最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。
Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
World of Fantasia
神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。
世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。
圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。
そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。
現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。
2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。
世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる