虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、捌いて裁く

懇神会 その18

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 観戦しかできなくなった俺は、決着の時をただ眺めていた。
 巨剣を振るう俺(『SEBAS』)と、雷の両手斧を振るう[クノッソス]の衝突だ。

 結果、迷宮の不壊性すらも突破した膨大なエネルギーが外部に漏れだす。
 局地的に展開していた深海フィールドも、同時に崩壊していく。

「──っと、戻りましたか。結果は……こうなりましたか」

『……、…………』

 俺の方は死んでリセットし、心身ともに元通りだが……[クノッソス]の方はそうなるわけもなく。

 荒い息を吐きながら、どうにか整えているようだ──その息が俺を殺しているのは、ご愛敬だろうか。

「お互い、満足の行く戦いであったかと。これならばきっと、神々もお喜びになられることでしょう」

『────』

 そう、どちらかが死を迎えるまで戦い続ける必要は最初から無かった。
 これはあくまで余興、ここに来た理由もあくまで英霊たちの処罰を決めるため。

 ……俺は死んでも続いていたし、英霊たちも迷宮をとっくに脱出しているようだが。
 そういうことは気にせず、[クノッソス]の前に立ち結界で眼前へ向かう。

「私は貴方を討伐しませんしできません。ですが、どうか覚えていてください。貴方はこの私──『生者』にとって、友であると」

『──』

「ツクル、それが私の名です。願わくば、貴方に再び出会う日が会うことを」

『──、──────ッ!!』

 突然、[クノッソス]が迷宮中に轟く声を上げる。
 そちらを見てみると、口角を釣り上げて何やら笑っている……ように見えた。

 実際にどう考えているのか分からないが、友と思えてもらえたなら嬉しい限りだ。
 ──いつか来る英勇が、彼を殺すその時まで……俺は彼の友を名乗り続けよう。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 その後、懇神会場に戻された俺に向けられたのは拍手喝采だった。
 やはり神々もこの余興には満足してくれたようで、多くの方々から声を掛けられる。

 英霊たちの中には戦いたいと声を上げる者も居たが、それらは神々が止めていた。
 ……ただまあ、また次の機会にと約束を取り付けられてしまったが。

「──やぁやぁ、人気者だね」

「! これは……創造神様、申し訳ございません」

「いいよいいよ、僕も鼻が高いよ。君という素晴らしい信者が居てくれて、お陰で僕たちの株も爆上がりだよ」

「お褒めいただき、光栄にございます」

 拙い敬語を駆使してはいるが、やはり創造神様の威光が凄い。
 そう評することしかできない自分が恨めしいが、ルリに匹敵する存在感は久しぶりだ。

「──そうだね、君の奥さんは特別だよ。あの子には……ちょっと敵わないかもね」

「! も、もうし──」

「いいんだ、こればかりは仕方がない。それに、君の口からそれだけは聞かなかったことにしないと。君の奥さんは僕も認めるぐらい凄い子、そう考えておけばいいよ。もっと気楽に、口調なんかもね」

「あ、ありがとうございます」

 会が始まってから顔は合わせていたが、きちんと話す機会には恵まれていなかった。
 創造神様──俺のEHOにおけるこれまでに大きく関わる存在……恩人ならぬ恩神だ。

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