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DIY、捌いて裁く
懇神会 その09
しおりを挟む現れたのはギリシア神話の秘蔵っ子、原初のミノタウロス[クノッソス]。
特異的な条件で誕生した彼(?)との逃避行が、今回英霊(+俺)の罰ゲームらしい。
「──と、ここまでが逃げるまでのあらすじみたいなものなんですが。はてさて、どうしたものやら」
回線を『セバスチャン』で繋ぎ、俺の体を結界で操ってもらっての逃走。
結果的に、弱体化している英霊たちよりも早く[クノッソス]から逃げられた。
動きが止まるまでと回想をしていたが、毎度のことながらどうしてこうもトラブルに巻き込まれるのやら……失名神話の神々に祈っても、状況は改善されない。
ほっと息を吐く前に、背後に飛ばしていたドローン経由で状況を確認。
英霊たちを追いかけて、[クノッソス]が悠々と歩いていた。
英霊たちに合わせてドローンを動かしているのに対し、俺が隠れているのは別方向。
幸いにして、[クノッソス]は俺に気付かないまま英霊たちを追っていった。
「この辺は情報通り、と……『SEBAS』が聞いてくれて助かりましたよ」
《いえ、遅れて馳せ参じた以上、旦那様に有用な情報をもたらすのは当然のことです》
「…………英勇殺し、ですか。それに特化した能力群……ある意味『ハニーハント』の英勇版みたいなものでしょうか」
──『冥宮雄牛[クノッソス]』。
世界が、神々が名付けた唯一無二のミノタウロスの名前だ。
歓声が上がるモニターの先では、ギリシア神話から彼の説明があったらしい。
それを『SEBAS』も失名神話の神々から聞き、俺に届けてくれている。
迷宮と一体化した彼は、その地に挑む英勇たちの尽くを殺していた。
その業績が反映され、それに特化した能力が与えられているとのこと。
《曰く、迷宮からの逃亡を図る英勇たちを逃さぬための能力とのこと。故に現在の旦那様には通用しません》
「……あー、そういえば【勇者】はセットしてませんでしたね。鑑定でもされて、情報を掴まれたくなかったからとはいえ」
いつでも“職業系統樹”を使えば……と考えていたので、強くはあるがセットしていなかったのだ。
幸いにもそれが上手く機能し、彼の察知対象から逃れていたらしい。
本来ならば挑むのは英霊のみ、俺のようなケースは想定外だったのだろう。
《旦那様、いかがなさいますか? 脱出の方法は先ほどお伝えした通りですが》
「……うーん、ただ逃げるだけだといろいろ言われそうですしね。よし、少しばかり余興でもしておきましょう」
《余興、ですか? ……なるほど、そういうことでしたら》
不思議そうだった『SEBAS』も、すぐに理解してくれたようだ。
そう、すべては余興──多少のおイタは許されるだろう。
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