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DIY、捌いて裁く
懇神会 その08
しおりを挟む創造神様が行う、失名神話を貶す英霊たちへの断罪劇……に巻き込まれた俺。
逃げようにも場所は分からず、創造神様も助けてはくれないだろう。
「すみません、一つ教えてください」
「ふざけ……ぐっ」
なので事情を知っているであろう英霊に、とりあえず声を掛けてみる。
何やら怒っているようだが……うん、持っていたメスを見せたら大人しくなった。
後ろから足音が鳴り響いている。
その音もどんどん近づいてきているし、早急に訊ねておかなければ。
「これから現れるのは、いったい……」
「……[クノッソス]だ」
「クノッソス? えっと、たしかギリシア神話に伝わる迷宮の名前……でしたか?」
「それは過去の話だ。奴はその迷宮を取り込み、一つとなった。自らを討伐しに現れた無数の英雄たちを屠り、神々の手で直々に封印された」
ふむ、創造神様と英霊の話を合わせて察するに……特異条件による災厄種化だな。
本来の神話なら討伐された原初のミノタウロス、それが何の因果か迷宮と一体化した。
結果として、英雄譚は成されず神々が動くことになる。
それこそが[クノッソス]と呼ばれる、災厄のミノタウロスのようだ。
「……あ、あぁ、ああああああ!」
「なるほど、アレが……[クノッソス]」
俺と話していた英霊とは異なる英霊が、慄き悲鳴染みた声を上げる。
俺たちもそちらを見ると、ちょうどソレが姿を現していた。
見た目は創作物でよく出るミノタウロス。
巨躯に牛の頭が付いて、巨大な両刃斧を握り締めている──問題はそれ以外の要素。
まず装備、野良と違い[クノッソス]は自らに必要な装備で身を包んでいる。
兜や鎧、脚甲だけでなく、魔法鞄や魔法薬などもきちんと持っていた。
そして、何よりも存在感。
ただのミノタウロスでは放てないソレは、英霊たちの体を震わせる……何より、見た瞬間から無数の死が俺を襲っている。
要はダメージ判定付きの風格なのだ。
鑑定スキルで英霊たちを確認したところ、慄いていた英霊には『恐怖』の状態異常が付いていた……そういう能力なのだろう。
「『SEBAS』……ダメですか」
ここに来てからいっさいの連絡が無かったのでまさかとは思ったが、やはり回線が途絶していた。
「“神持祈祷:セバスチャン”」
《──様! 旦那様! 良かった、そちら側で回線を復旧していただけたのですね》
「ええ、事情の方は?」
《はい、こちらでも旦那様の状況は確認できておりました。現在はプログレスを介し、確認を取っているところです》
どうやら女神プログレスが、ドローンを回収してくれていたようだ。
それを介し、失名神話の神々と合流して事情の方を聞いてくれているとのこと。
まあ、いちおうでも俺は被害者だし。
とりあえずは逃げるのだが……うん、クリア条件を確認しておこう。
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