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DIY、捌いて裁く
懇神会 その05
しおりを挟む神の酒ネクタルの副作用、人の身で飲み干した代償に耐えた後。
懇神会が本格的に始まり、出し物なども行われていく。
問題が起きたのは失名神話の出番が来る少し前、準備をしていた神の発言から。
「……ふむ、有りませんね」
「無い、とは何がでしょうか?」
「出し物の小道具に準備していた物です。忘れてきたか、あるいは……」
「隠されたか、でしょうか」
舞台裏でそう呟くのは、演芸神様。
宴会芸の女神ならぬ男神様は、持ってきたはずの小道具を探していた。
「代用はできないのでしょうか?」
「無論可能です……しかし、今の我々では少し難しいものも」
神様は基本、司る分野に関する品なら自由に創造できる。
しかし、より性能の高い物を作ろうとすればそれだけ負担も大きい。
ギリシア神話や北欧神話であれば、その程度容易くこなすだろう。
……がしかし、失名神話の方々はまだまだその域には達していなかった。
「せめて、この場が我々の神域であれば、開始前に準備を終えられましたが……」
「あの、何かできることは?」
「……そうですね、では──これらを作ることはできますか?」
指を額に着けられ、そこから流し込まれる精密なイメージ。
脳の許容量を超えて何度か死に戻った後、レシピとして記されたそれらを確認。
「……これは、凄いですね。私の世界の手品師では、とてもできない」
「少し気分は悪くなるかもしれないが、私はこれでも神です。何より、私は手品の神でも宴会の神でもなく演芸の神──ほんの少し、できることには自信があるのですよ?」
「分かりました、これらの品は責任を以って早急に作り上げます。なのでほんの少し、時間をお願いします!」
「さすが、■■■様の御業を受け継ぐ者。ではその言葉、信じさせてもらいましょう」
そう言って舞台に上がる演芸神様。
さっそく舞台ではショーが始まり、複雑な小道具が無くてもできる芸で神々を楽しませている。
俺はその間に、与えられた知識から次々と小道具を作り上げていく。
ただの棒、小さな箱、そして扇──そう見える品々が出来上がった。
今回は時間重視、かつ普段の俺では決して作ることができない物だったため:DIY:頼りでの製作である……今までで一、二を争う難易度だった気がする。
「演芸神様、これを!」
俺が投げ渡せるほどに軽いそれらを受け取ると、演芸神様の芸はさらに派手さを増す。
棒は雲を生み、箱は物を消し、扇は──凄いことを引き起こす。
「えー、アレどうやっているんだ……」
《解析不能。単なる権能では無く、技量による物もございます》
「達人芸……いや、達神芸か。うん、まさに神業だな」
ショーは大盛り上がり、喝采を浴びながら演芸神様は舞台から降りるのだった。
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