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DIY、捌いて裁く
懇神会 その02
しおりを挟む懇神会に集う神々は、それぞれの神話で集まりその時を待っていた。
北欧神話、ギリシア神話、そして失名神話の神々たちだ。
一部の英霊──エインヘリヤルやヘーロースも招かれているのだが、失名神話には英霊は居らず、強い権能を持つ神も居ないため陰であることが囁かれている。
「『名を失った弱小神話』、ねぇ……まあ間違っていないよね!」
「主神がそう振る舞っていては、儂らも強く出れぬではないか」
「仕方ないよ、それは事実。あの星だって、あんなことが無ければ…………ツクル君が来てくれて、本当に良かったよ」
「ああ、それだけは間違いない」
かつては他の神話に並び立つほどの力を秘めていた失名神話だったが、ある事件を境にその権威を失っていた。
長らく続いたその日々は、一人の休人の来訪と共に終わりを告げる。
ツクル──創造神の権能を授かりしこの男の活躍により、着々と力を取り戻していた。
「だからこそ──舐められっぱなしは、ダメだよね?」
『ッ……!?』
「まったく、ほどほどにしろ。懇神会はまだ始まっては居らんぞ」
「あはは、そうだったね」
陰口を叩いていた者たちに向けられた、創造神■■■による強烈な神威。
力を失っていた頃ではできなかった、強力な圧に彼らは言葉を失う。
招かれていたのが実力者だけだったこともあり、気絶をした者は居ない。
しかし、その神威はまさしく■■神話の主が帰ってきたことを表していた。
「うん、これでよしっと。さーって、そろそろ始まるかな?」
そう呟くとほぼ同時、会場を灯していた明かりがいっせいに消える。
英霊たちが困惑する中、再び明かりが灯っていき──ステージに独りの男が現れた。
「さぁ、長らくお待たせしました。ただいまより、懇神会の方を始めさせて──」
「おい、ちょっと待て!」
男の進行を遮るように叫んだ英霊は、声を張り上げ意を唱える。
本来の予定とは異なる展開、しかし誰も彼らを止めようとはしない。
「そもそもお前は誰だ! 司会はヘルメス神様が行うはずだっただろう!」
「ええ、そうでしたね。ですが彼の御方に、変わってもらえないかと頼んでみたところ快く受け入れてくださいました」
「何だと!?」
「まあ、それは置いておきましょう。後ほどお聞きになれば……っと、これ以上皆様をお待たせさせるわけにはいきませんね。では、開会の言葉をゼウス神様、お願いします」
平然と、英霊の苦言を無視して進行を続けようとする男。
そんな男の呼びかけに応えたのか、一柱の神が舞台上に現れた。
トーガを纏う白髪の老人──否、老神。
その手には雷を模した杖のような物が握られており、時折バチッと火花を放つ。
彼の神の名はゼウス。
天空を支配する神であり、ギリシア神話の主神である。
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