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DIY、捌いて裁く
オリンポス山 中篇
しおりを挟む手違いもあり、転移先は懇神会の会場があるオリンポス山の麓だった。
目的地はおそらく神殿、辿り着くためにはいろいろと手順が必要だ。
「まず、聖職者として向かうのは無しだな。最上位職や一部の特化職には、相手の信仰対象が分かる能力があるみたいだし」
《【審問官】が保有する能力ですね。具体的な対象は分からずとも、己が信仰する神かどうかであれば把握されることでしょう》
「今更他の神々に現を抜かすわけにはいかないからな……偽装できない以上、この方法はアウトになる」
神殿そのものが神秘的な場所として存在するため、秘匿──つまり隠蔽などは無効化されてしまう。
理屈? まあ、神からは逃れられないとかそういう感じだ。
絶対は無いが、それでも祀られている神以上に隠蔽能力が無いと成功しない。
「となると、やっぱり普通に観光として行ける所まで行ってみるか……王道が一番だ」
《ドローンはいかがなさいますか?》
「内側は無し、あくまで外側から偵察だけしておいてくれ。あと、一機だけ俺の所に潜ませておいてほしい──ただし、場所は言わないでくれよ」
《……畏まりました》
回りくどい指示を終えると、俺は改めて神殿へ向かう。
現実のオリンポス山と違い、こちらの山には神殿やそこへ続く道に街が存在する。
富士山の各休憩所に宿泊場などがあるように、こちらも街が形成されたのだろう。
上に行けば行くほど少ないが、それには明確な理由があるようで。
《各区画ごと、武装した神官たちが検査をしているようです。資格を持たない者は、通行できない形になっています》
「条件はなんだ?」
《……。ギリシア神話の信仰、そして一定の地位ですね。また、ギリシア神話側で認められている宗教を信仰していれば、最奥まで辿り着けるようです》
「──うん、これ自力じゃ無理だな」
もちろん、強行突破なら問題無い。
だがそのやり方が生み出す悪影響を考えると、さすがに自重する。
「そうなると……『SEBAS』」
《そうですね、問題無くイケるかと》
「貸し一つ、とか付けられそうだな……けどまあ、失名神話のためならえんやこらだ。連絡をしておいてくれ」
それから程なくして、転送されてきた一枚の書状を持って登山開始。
道を阻む神殿関係者も、それを見せるだけであっさりと俺を通してくれる。
《旦那様、メッセージが……『貸し二つ』とのことです》
「予想より一つ多かったか……」
《依頼そのもの、そして緊急であったことで二つのようです》
「くっ……仕方ない、甘んじて受け入れようじゃないか」
なんてやり取りをしている間に、山頂の神殿はあと少し。
このまま会場に着けばいいが……うん、それは無理だろうな。
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