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DIY、捌いて裁く
続探索イベント その17
しおりを挟む人形経由で商売をやっていると、ジンリの手の者と思われる連中が絡んできた。
そうじゃない可能性も有るが、それはそれで都合の良い情報収集に使える。
『申し訳ございませんが、閉店作業中です。また次の開店をお待ちください』
「はぁ、何言ってんだ? そこにまだ商品はあるだろうが! さっさと、それを売れって言ってるんだよ!」
『ですので──』
「人形相手に何言っても変わんねぇか。壊れれば、お前の主も出てくるだろうよ」
武器を構える休人たち。
それを見て、止めようとする善意溢れる休人も居なくはないのだが……人形が一言。
『敵対行動を確認しました──迎撃を開始します』
「はっ? ……おごっ!?」
『術式起動──『千変宝珠』』
槌を振るおうとしていた休人を蹴り飛ばすと同時、起動する魔術。
内蔵してある愚者の石により、仕込んである唯一の魔術が発動した。
それは自動的に足を包む脚甲となり、蹴りの威力を向上させる。
インストールされた戦闘プログラムが、隙なく戦闘を進ませていく。
『武術模倣──『鎌斬』』
「くそっ、聞いた話と違うぞ!?」
それは『アーツクリエイター』というジーヂーの『プログレス』で開発された武技。
そこに“千変宝珠”の補助が加わり、強化されている。
身力の流れまで模倣して、放たれた両腕を構えてから行われる連撃。
休人たちは耐えていたが、だんだんと斬撃のダメージが蓄積し……死に戻っていった。
『殲滅完了──通常業務に移行します』
何もせず、ただ見ていた休人たちも呆然と見ている。
人形が、『プログレス』も武技も魔法も使えないと思っていた存在の強さを知った。
それは彼らの常識では、ありえないと思える事象なのだ。
……だからこそ、反応も如実に掴むことができる。
《手の者を確認しました》
「そりゃあジンリ派の連中は、エクリと遭遇しているわけだしな。前例を知っているわけだし、そこまで驚かないだろう」
まあ、前回のイベントで無双したエクリは最上の素材を用いたいわばプロト版だ。
そこに掛けるコストやらを考えれば、できなくはないと考えたかもしれない。
しかし、今回俺が派遣した人形はいわば量産版の代物。
そのすべてに同じことができるならば……そう思わざるを得ない。
「確認した連中には印を。ジンリのことだ、直接じゃなく二重三重に連絡網を広げているだろうからダミーには注意してくれ」
《畏まりました》
俺のことを知っている相手なので、非常にやりづらい。
それでも面倒事を避けるため、今しばらくは頑張るとしよう。
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