虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,042 / 2,831
DIY、捌いて裁く

かつての技術 中篇

しおりを挟む


 かつて存在した技術、そしてそれを生み出したモノに想いを馳せた。
 神代、神々が地上に居た時代に、人族で何かを成し遂げた者は居るに違いない。

「神代魔道具……現存する魔道具とは一線を凌駕する、圧倒的な性能を持つアイテム。その一つはあの地下世界……アレは、一定規模の人族の集団が在れば、自動的に繋がる道ができる特別な効果がある」

 そう、暗躍街や闇厄街に繋がる道は決して一つではない。
 そのうえ、地上の発展に伴いどんな場所にでも作られる可能性を持っていた。

 ゲームで言うなら、それこそワープゾーンのような使い道を画策できそうなものだが。
 残念なことに、システム的にロックが掛かり入った場所からしか基本的に出れない。

 なお、『プログレス』でもそういったシステム的な問題に干渉できる能力の使い手が解除に挑んだところ、失敗したうえに反撃までされたとタクマから聞いたことがある。

 もともと、『プログレス』の仕組みは神代魔道具である願望機を基に構築されたモノ。
 そちらに対して設けられていたと思われる対策により、あっさり無効化されたわけだ。

「高い技術力…………そして、案役街。そうか、可能性はゼロじゃないのか」

《…………》

 一度、俺はあの地下街に存在する第三の街に近づいたことがある。
 そこは肉体を使わずに居られる、量子と霊子の電脳世界。

 神代において確立していた、魂の観測により保存された亡き人々の住まう街。
 俺自身はその中には行かず、差し向けられた刺客を入り口の前で追い返したのみだが。

「まあ、お前なら何かやっているだろうな。いや、構わんよ別に。すべては、俺の……家族のためになることだろうしな。というか、大当たりのアイテム二つ渡したし」

《申し訳ありませんでした。しっかりとした情報をご提示できるまで、ご報告は後回しにと考えておりました》

「ああ、それでいい。干渉したところでできることは大してないし。あえていっさい俺が手を出さない方が、利点が多いって考えてのことだろう? なら、そのまま貫いたうえでいい結果を出してくれればいいさ」

《畏まりました。その命、強く刻みます》

 壊れた模型と一枚の紙、それが必要だということで例の街に贈ったのだ。
 アレ以降、俺が案役街で何が起きているのか知らないが……絶対に何かしている。

 とはいえ実際問題、俺があの街に入ってできることは大して無いからな。
 そもそも、入場の辺りでほとんどの奴は詰む仕様だし。

 まあ確かに、中に住まう人々の中には神代の技術を把握している者も居るだろう。
 だが、それは『俺』が聞く必要は無いわけで……うん、『SEBAS』にお任せだ。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

てめぇの所為だよ

章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

処理中です...