虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、刺客に抗う

天空攻防 その10

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 俺を助けてくれたのは、まだ未覚醒のはずの[宿業]だった。
 殺した存在を蘇らせる能力によって、宇宙に飛ばされることは免れる。

「──とまあ、そんなこんなで今の今に至るわけだ」

 回想を終え、そう纏めた。
 今なお握り締めている[宿業]は、俺という命の供給源を使うことで『飛武』の牽制を行っている。

 落下している俺だが、今は冒険世界というかシステムの恩恵にあやかれる状態。
 そこに[死に戻り]や[称号]も含まれているので、問題なく死ぬことができた。

「ところで、結局のところ『飛武』の権能や能力は何だったんだ?」

《『飛武』自体の権能は、自身が宙に居る際の特殊防御をすべて無効化すること。システムを用いた手段はすべてが無意味です。また職業は【飛闘王】、こちらは高度に応じた能力値補正を得られます》

「……ふむ、俺がある程度予測していたものとほぼ同じか。死に戻りの無敵化も無効化されたし、最後は重力やら摩擦をゼロにして上に飛ばされたりしたぞ」

《それは【飛闘王】の奥義“空天到致スカイアッパー”ですね。高度を上げる補正に加え、減衰ゼロで地面に叩きつけることでほぼ確実に対象を倒すことができます。これは対人戦のみでなく、魔物にも有利に使用可能です》

 人を浮かせることは……まあ、こちらの世界の身体能力なら簡単だろう。
 しかし重量がとんでもない魔物を上に上げるのは、本来とても困難。

 だが【飛闘王】の奥義があれば、当てさえすればほぼ確実に飛ばせるはず。
 先ほどの俺のようにそのまま宇宙に飛ばすでも、地面に叩き落とすでもすれば倒せる。

 ……まあ、おそらく宇宙に飛ばしたら勝利判定が微妙になるだろうが。
 それでも確実に殺すことができる、かなり厄介な能力の組み合わせだ。

「攻撃すれば確実に当てられる『飛武』、それに高い位置で当てれば火力を上げることがでいる【飛闘王】。面倒な相手だ……対人戦の方が得意みたいだし、『飛武』の方が後付けかもな」

《おそらくはそうでしょう。あくまでも補助であり、【飛闘王】としての武術を見込まれて選ばれたのかもしれません》

「たしか……『極武』だったっけ? 就任方法は……引き継ぎと任命で、この場合は任命の方だな」

 強い職業があるから権能を与えられる、あるいは権能があるから強い職業に就ける。
 だが『飛武』の権能があろうと、空中での格闘術を後天的に身に着けるのは難しい。

 それは、『バトルラーニング』でも対処できていなかったことから間違いない。
 ──そして今、ドローンを破壊し尽くした『飛武』が俺を追いかけてきている。

「『SEBAS』、イケるか?」

《回線はすでに復旧済み、対策もいくつかプランがございます──お任せいただければ、その命を果たしてみせましょう》

「よろしい。では、さっそく実行だ」

《仰せのままに》

 そして、やられっぱなしだったこちらも反撃に移る。
 …………完全に虎の威を借りる狐なんだけど、その辺は気にしないでほしい。

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