虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

DIY、救星主になる

海再生プロジェクト 前篇

「ついに……このときがやって来たか」

　なんてことはない。
　ただ──地図が完成した。
　ドローンの中に入れるホイホ°イカプセルの数を増やし、そこにドローンを組み込むことで効率を上げたのだ。

　そうした地味な作業を足したからか、拓真と話した後にログインしたら完成していた。
　パソコンには海在ったと思われる干上がった土地と、そこから繋がる大陸の先端が映っているぞ。

　……でも、デカいな。
　海が広大さは、太平洋と大西洋を足したぐらいの凄まじさである。

「それじゃあ、早速始めよっか！」

　パソコンからプログラムを起動すると、海や海に沿って設置された装置へと指令が伝達し──再生プロジェクトが始まる。


　モクモクと煙が装置から生みだされると、物理法則を無視して自然現象が起きる。

　マグマオーシャンを生成する過程は省き、いきなり中性の雨が天から降り注ぐのだ。
　海は結界で囲まれているので、こちらに水滴が到達することはない。

　ただひたすら、乾いた大地を潤すためだけに雨は降り続いていった。

　もちろん、中性の雨を流すだけでは意味がないことは分かっている。
　海に設置された装置が作動し、眠っていた海底火山を無理矢理目覚めさせて動かす（あれだけ広ければ一つぐらいあるよな）。

　上からは雨が降り注ぎ、下からは火山による熱が発生する。
　装置によって生成されていたさまざまな原子や分子が化学反応を起こし、生命誕生へと一歩ずつ近づいていく。

　暴風雨の中からは稲妻が、装置が海中から魔力を海へと浸透させる。
　地球には無かったエネルギーを使い、複雑な物質が少しずつ生まれていき……遂には、この世界に新たな生命を誕生させた。



　やがて本当に極小であるが、細菌生物が海の中に生まれた。
　便利な装置たちは、パソコンへそう連絡を送ってくる。

　これこそが、俺のくだらない妄想が現実へと反映されたことを証明してくれていた。

　太陽はこの世界で未だに発見されていないのだが、植物を作る際に光合成に必要なエネルギーが創れる装置は、すでに製作済みだ。
　今はまだ激しい雨が降り続いているので使わないが、いずれその装置を使うだろう。

　ただ、一つ問題があって……。

「これ、いつ止むのかな？」

　雨が猛烈な勢いで降ったため、もう海は満ちたる直前という状態である。
　天候現象装置はそれを確認後止めたが、それでも今までに溜まった分の雨は、止むことがない。

　いつまでも雨が止まないのなら掃除機でも改造して吸い込む予定だが……まあ、その内止むだろう。
　そんな適当な感じで待つことにした。



　雨が止み、再びいつも通りの光景そらが海の上に広がったのは──一度ログアウトをして食事をしてからであった。