虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、刺客に抗う

称号獲得実験 中篇

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 迷宮『永久の楽園』派生『冒険の間』

 迷宮に潜るのは俺、『SEBAS』の人形体であるセバヌス、カルル、そして風兎。
 目的は[称号]の獲得、そのために俺は彼らを庇ったり庇われたりする。

「──はい、まずは簡易調査の結果だな」

 魔物と何回か戦闘し、その結果を話す。
 魔物はそこまで強くないし、そもそも戦闘は俺がやっていて他のメンバーは特段何もしていなかった。

「[称号]は獲得できなかった。数の問題かもしれないが、それ以上におそらくは質。相手の魔物が強い方が効果的なんだろう」

「おそらくは。弱い個体を相手に、[称号]獲得が可能な功績は難しいかと。あるいは、[パーティー]の合計レベルとの差なども起因してくるかもしれません」

「……それだと、かなり難しいな」

 セバヌスはレベル0、命を宿さない人形であるため成長性がまったく無い。
 素材の質なども加味すればやや向上するものの、それでもそこからはいっさい不変だ。

 カルル、風兎は逆に強過ぎる。
 元【魔王】四天王の一人と森獣という強者たちなので、むしろ弱いと困るという話。

「となると、強い個体を探す必要があるわけか……ここの地下に固有種は封印されていると思うが、それはさすがにな。そうだな、一度ここから出て『再起の間』に行こうか」

『なんだそこは?』

「俺、そして俺の家族が経験した戦闘を体験できる場所だ。迷宮のシステムが組み込まれているから、いちおうは正規の個体としてカウントされるはず……まあ、固有の[称号]なんかは無理だと思うけど」

 過去の幻影を投影する、そういった展開は創作物でも定番だ。
 それを迷宮のシステムを利用して可能にしたうえで、実際に戦えるようにした。

 形は違うが、固有種の再利用版『(再)』個体と同じようなもの。
 その状態こそを正規として捉えられるだろうから、同じ功績にはならないはずだ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 派生『再起の間』

 その部屋に置かれているのは石碑。
 触れた相手の戦績を取り込み、以降誰でもここでその者が戦った相手と擬似的に戦うことができるという場所。

「更新完了っと……さて、使いますか」

 なお、そんな貴重な代物なので移動は不可だし登録も家族だけに限定されている。
 保存できる容量に限界……は無いが、一定期間ごとに『SEBAS』が整理していた。

 まあたしかに、ゲームでもずっと同じ状態というのはつまらないものだし。
 一定の時期だけ楽しめる、というやり方は大変好ましい。

「全員、準備をしてくれ。それなりに強いヤツを出してみる」

 そう注意をしてから、石碑を操作してこの場にある存在を生み出す。
 その存在とは──

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