虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,014 / 2,853
DIY、刺客に抗う

称号獲得実験 中篇

しおりを挟む


 迷宮『永久の楽園』派生『冒険の間』

 迷宮に潜るのは俺、『SEBAS』の人形体であるセバヌス、カルル、そして風兎。
 目的は[称号]の獲得、そのために俺は彼らを庇ったり庇われたりする。

「──はい、まずは簡易調査の結果だな」

 魔物と何回か戦闘し、その結果を話す。
 魔物はそこまで強くないし、そもそも戦闘は俺がやっていて他のメンバーは特段何もしていなかった。

「[称号]は獲得できなかった。数の問題かもしれないが、それ以上におそらくは質。相手の魔物が強い方が効果的なんだろう」

「おそらくは。弱い個体を相手に、[称号]獲得が可能な功績は難しいかと。あるいは、[パーティー]の合計レベルとの差なども起因してくるかもしれません」

「……それだと、かなり難しいな」

 セバヌスはレベル0、命を宿さない人形であるため成長性がまったく無い。
 素材の質なども加味すればやや向上するものの、それでもそこからはいっさい不変だ。

 カルル、風兎は逆に強過ぎる。
 元【魔王】四天王の一人と森獣という強者たちなので、むしろ弱いと困るという話。

「となると、強い個体を探す必要があるわけか……ここの地下に固有種は封印されていると思うが、それはさすがにな。そうだな、一度ここから出て『再起の間』に行こうか」

『なんだそこは?』

「俺、そして俺の家族が経験した戦闘を体験できる場所だ。迷宮のシステムが組み込まれているから、いちおうは正規の個体としてカウントされるはず……まあ、固有の[称号]なんかは無理だと思うけど」

 過去の幻影を投影する、そういった展開は創作物でも定番だ。
 それを迷宮のシステムを利用して可能にしたうえで、実際に戦えるようにした。

 形は違うが、固有種の再利用版『(再)』個体と同じようなもの。
 その状態こそを正規として捉えられるだろうから、同じ功績にはならないはずだ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 派生『再起の間』

 その部屋に置かれているのは石碑。
 触れた相手の戦績を取り込み、以降誰でもここでその者が戦った相手と擬似的に戦うことができるという場所。

「更新完了っと……さて、使いますか」

 なお、そんな貴重な代物なので移動は不可だし登録も家族だけに限定されている。
 保存できる容量に限界……は無いが、一定期間ごとに『SEBAS』が整理していた。

 まあたしかに、ゲームでもずっと同じ状態というのはつまらないものだし。
 一定の時期だけ楽しめる、というやり方は大変好ましい。

「全員、準備をしてくれ。それなりに強いヤツを出してみる」

 そう注意をしてから、石碑を操作してこの場にある存在を生み出す。
 その存在とは──

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

【完結】会いたいあなたはどこにもいない

野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。 そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。 これは足りない罪を償えという意味なのか。 私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。 それでも償いのために生きている。

処理中です...