上 下
2,010 / 2,733
DIY、刺客に抗う

称号おさらい 前篇

しおりを挟む


 俺のプレイスタイル──いわゆるビルドについて考えてみた。
 結論として、:DIY:マジ最高、失名神話の皆様ありがとうございますとなる。

 だが、そんな:DIY:にも対応しきれない点があるわけで。
 それらの解消も兼ねて、情報収集のためにタクマの下へ再び向かった。

「──というわけで、頼む」

「…………前回と同じボケを、すぐに思い出せるくらい短期間で使い回すなよ」

「仕方ないだろう? なんだかんだ言ってもお前が頼りなんだから」

「チッ、金が取れればよかったのに……」

 この男、俺から売れる情報を大量に手に入れているためむしろ払う側だ。
 俺の場合、レベル999の鑑定拡張情報と『SEBAS』の解析能力があるからな。

「で、具体的には何だ?」

「そうだな……使うか使わないかは別にしても、[称号]が欲しいな。とりあえず、獲得条件が判明しているものをくれ」

「いいのか? 既知の情報だと効果が劣化したり、関連する[称号]が取れなくなる場合があるぞ?」

「おっと、[クエスト]みたいにそういうシステムがあったか……ヒントも劣化する要素みたいだし、やっぱり止めておくか」

 脳波だか魂関連の謎技術の影響か、再現性頼りのプレイはあまり価値が無い。
 検証チーム泣かせのこの仕組みにより、報酬が劣化することが確認されている。

 そもそもとして、MMOとはそういうものとも言えるが。
 常にまったく同じ悩みを抱える者が、いつまでも存在するはずが無いのだ。

 どうやらそのシステムは、[称号]にも反映されているようで。
 ……まあ、[称号]とは称える号なのだ、そうポンポンと量産はされるはずが無いか。

「とはいえ、劣化無しの[称号]もいくつか確認されている。いわゆる、討伐系だ」

「……ふむ」

「『竜殺し』なんて定番だな。アレは広くそれが凄いことって、最初から認知されているから劣化が無いんだよ」

「……なるほど」

 たしかに、竜を殺すのは矮小な人の身からすれば偉業となるのだろう。
 そう考えると、いろいろと気になることが浮かんでくる。

「じゃあ、竜が竜を殺したら『竜殺し』って[称号]は手に入るのか?」

「いや、竜としてプレイを始めたヤツによるとそれは無かったらしい。『同族殺し』、それが手に入ったそうだ」

「同格の存在だからか? 竜の上位存在は特に浮かばないからアレだが……うん、この辺にいろいろと鍵がありそうだな」

 下位、同格、上位存在の討伐数などで得られる[称号]はおそらく劣化しない。
 戦闘を行う、そして勝利するという功績自体に劣化の余地が無いからだ。

 改めて考えてみると、とても興味深い。
 情報源はまだ隠し持っているようだし、洗い浚い吐かせてみよう。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」

サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――

番だからと攫っておいて、番だと認めないと言われても。

七辻ゆゆ
ファンタジー
特に同情できないので、ルナは手段を選ばず帰国をめざすことにした。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~

秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」  妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。  ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。  どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。

処理中です...