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DIY、刺客に抗う
生産世界初訪 その26
しおりを挟む描かれた絵から生み出された魔物。
俺を無力化し、強制的に生産世界から追い出すための特別仕様らしい。
対する俺は未来視を複数展開し、繋ぎ合わせることで『万象戯画』の行動を予測する。
変化する未来は可能性の啓示、取るであろう行動から、界画術の仕組みを暴く。
「──“千変宝珠”」
魔力の球体を作り上げ、イメージを注ぎ込むことで形体と宿す属性を決める。
そこに『SEBAS』の補助が入り、異なる武器種と属性を可能にした。
展開された武器を、それぞれスライムモドキの人造魔物に放っていく。
体に突き刺さる武器──それはやがて、溶けるように消えていた。
《体内の魔法文字が作用していたことを確認しました。魔力による攻撃に対し、分解の術式として機能するようです》
「無駄さ。この子は魔法を無効化する、そしてスライムゆえに物理攻撃も受け流す。完璧とは言えないだろう、それでも君を無力化するには相応しい」
解析された情報に、重ねて告げられる本人からの証言。
対俺用のスライム……いやまあ、どんな奴が相手も通用する気がするけど。
ともあれ、突破するためには正攻法ではいけないようだ。
アイスプルや冒険世界であれば取れたであろう手段は、生産世界では使えない。
「──“孤独蟲毒”、“星記改悪”」
「君は何をして……レベルの弱体化? 能力値が上がった……そういう能力かな? それでも、その程度の強化では無意味さ」
「さて、無意味かどうかは……やってみないと分かりませんね!」
これまでは結界を展開して対処していた絵による事象も、スライムモドキの攻撃にも自ら体を晒して被弾を重ねる。
俺の持つ無数の職業能力、[称号]の効果が多重で起動していく。
そして、“孤独蟲毒”の効果によって能力値が高まる。
相手とのレベル差などで発動する効果も、“星記改悪”で調整して満たす。
僅か数十秒足らず、本気で死にまくった俺の能力値は急激に高まっていた。
「……いったい、どのような方法を取れば一瞬でそこまで強くなれるのかな?」
「それだけの代償を、死を、支払ってのものですので──“天閃腕”、“地裂脚”」
仙丹をアイテム経由で練り込み、腕を払うと飛び出す斬撃。
切り裂かれたスライムモドキの真下を、今度は足踏みでできた地割れが襲う。
それ自体に魔法の介入は無い、これはあくまでも仙術(物理)なのだから。
そこまで能力値自体は高くなかったスライムモドキは、大地に呑み込まれていった。
「……驚いたよ、まさか虚弱だと思っていた相手がここまで脳筋のようなやり方を取って来るとはね。だが、勝利のイマジネーションは今浮かんだ、これで終わりにしよう」
《──旦那様、解析が終了しました。界画術の詳細を開示します》
決着を付けようとする『万象戯画』、そしてその仕組みを暴いた『SEBAS』。
二人の行動はほぼ同じ、この戦いの結果を決めるのは──俺次第。
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