虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
1,999 / 2,853
DIY、刺客に抗う

生産世界初訪 その26

しおりを挟む


 描かれた絵から生み出された魔物。
 俺を無力化し、強制的に生産世界から追い出すための特別仕様らしい。

 対する俺は未来視を複数展開し、繋ぎ合わせることで『万象戯画』の行動を予測する。
 変化する未来は可能性の啓示、取るであろう行動から、界画術の仕組みを暴く。

「──“千変宝珠”」

 魔力の球体を作り上げ、イメージを注ぎ込むことで形体と宿す属性を決める。
 そこに『SEBAS』の補助が入り、異なる武器種と属性を可能にした。

 展開された武器を、それぞれスライムモドキの人造魔物に放っていく。
 体に突き刺さる武器──それはやがて、溶けるように消えていた。

《体内の魔法文字が作用していたことを確認しました。魔力による攻撃に対し、分解の術式として機能するようです》

「無駄さ。この子は魔法を無効化する、そしてスライムゆえに物理攻撃も受け流す。完璧とは言えないだろう、それでも君を無力化するには相応しい」

 解析された情報に、重ねて告げられる本人からの証言。
 対俺用のスライム……いやまあ、どんな奴が相手も通用する気がするけど。

 ともあれ、突破するためには正攻法ではいけないようだ。
 アイスプルや冒険世界であれば取れたであろう手段は、生産世界では使えない。

「──“孤独蟲毒”、“星記改悪ダウンレコード”」

「君は何をして……レベルの弱体化? 能力値が上がった……そういう能力かな? それでも、その程度の強化では無意味さ」

「さて、無意味かどうかは……やってみないと分かりませんね!」

 これまでは結界を展開して対処していた絵による事象も、スライムモドキの攻撃にも自ら体を晒して被弾を重ねる。

 俺の持つ無数の職業能力、[称号]の効果が多重で起動していく。
 そして、“孤独蟲毒”の効果によって能力値が高まる。

 相手とのレベル差などで発動する効果も、“星記改悪”で調整して満たす。
 僅か数十秒足らず、本気で死にまくった俺の能力値は急激に高まっていた。

「……いったい、どのような方法を取れば一瞬でそこまで強くなれるのかな?」

「それだけの代償を、死を、支払ってのものですので──“天閃腕”、“地裂脚”」

 仙丹をアイテム経由で練り込み、腕を払うと飛び出す斬撃。
 切り裂かれたスライムモドキの真下を、今度は足踏みでできた地割れが襲う。

 それ自体に魔法の介入は無い、これはあくまでも仙術(物理)なのだから。
 そこまで能力値自体は高くなかったスライムモドキは、大地に呑み込まれていった。

「……驚いたよ、まさか虚弱だと思っていた相手がここまで脳筋のようなやり方を取って来るとはね。だが、勝利のイマジネーションは今浮かんだ、これで終わりにしよう」

《──旦那様、解析が終了しました。界画術の詳細を開示します》

 決着を付けようとする『万象戯画』、そしてその仕組みを暴いた『SEBAS』。
 二人の行動はほぼ同じ、この戦いの結果を決めるのは──俺次第。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

処理中です...