虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
1,992 / 2,829
DIY、刺客に抗う

生産世界初訪 その19

しおりを挟む


 三人のギルド総長から、それぞれが秘匿する技術を見せてもらった。
 一度切り、かつ説明は無しというシビアなものだが……『SEBAS』が居るからな。

「──皆さん、ご協力誠に感謝いたします。改めて、お礼を申し上げます」

「なぁに、いいってことよ。困ったときはお互い様ってな」

『…………』

 唯一、この場で何もしていない魔材ギルドの返事に対する冷たい視線。
 実際、俺も特典の実験を兼ねて剥闘術らしきものを使っている光景しか見ていない。

 代わりに指南書的なものを読ませてもらっているので、他の技術に比べて理解度合いは上ではあるけども……何だろう、胸を張れるほどでは無いと思うんだよな。

「ま、まあとにかく、これで皆さんの目的は果たせた、ということで──」

「待ちな。アンタ、まだ隠し事があるんじゃないかい?」

「……人間、一つや二つの人に教えられない隠し事があるものでは?」

「だろうね。だが、アンタのそれは人に教えられるが出し渋っているそれさね。さぁ、言いたいことがあるんじゃないかい?」

 積極的に問うてくる工匠ギルドの総長。
 周りも何も言ってこない辺り、これまで同様反論は無く同じ意見ということ。

 チラリと魔材ギルドの総長に目を向けるのだが……残念、目を逸らしやがった。
 どうしたものか、と[インベントリ]内を探り……新規で入っていた物を取り出す。

「こちらは、あまり世に広めない方が良いと思っていましたが……皆さんの総意というのであれば、仕方ありません。私が受けた恩は返しきれるものではありませんし、皆さんにお渡しします」

 この状況を知ってか予見してか、追加で資料を作ってくれていた『SEBAS』。
 題名は『文献:遺失大陸の特殊技術について』、つまり幻想世界に関する情報だ。

「い、遺失大陸だって!?」

「冒険世界には、それらに関する情報がまだ残されておりましたので」

 嘘は言っていない。
 レムリアやパシフィスなど、鍵の少女たちは冒険世界に連なる世界に居たのだから。

「あくまでも、文献を復元した物ですので、一部の情報は抜けています。ですが、皆さんに未知の情報を与えてくれることだけは保証しましょう……あっ、これはあくまで複写した物ですので、四人全員にお渡ししますよ」

「……ずいぶんと、手際がいいね」

「いえ、ご覧の通り──事前に複写はそれ以上に進めておきましたので」

 本や書類に関する職業には、そういう系の能力も付いている。
 なので大して怪しまれることなく、彼らは資料を受け取り目を通し始めた。

 それからしばらく、何度か質問を受けてはそれに答えていく。
 ──俺が自由の身となったのは、翌日のことである。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】聖女ディアの処刑

大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。 枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。 「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」 聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。 そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。 ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが―― ※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・) ※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・) ★追記 ※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。 ※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。 ※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

処理中です...