虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
1,954 / 2,831
DIY、シンコウに備える

魔王防衛策 その02

しおりを挟む


 休人が魔王城に攻め込んでくる、そんな情報が他でもない【魔王】からもたらされる。
 とりあえず、家族と闘っても権能は返してもらえるよう約束は取り付けておいた。

「──さて、それじゃあやりますか」

 そんな約束を交わした後、俺はあることを【魔王】に頼まれた。
 休人への対抗策の準備、具体的なことは何も言わずそれを俺に依頼してきたのだ。

 何をしても良い、つまりはそういうことなのだろう。
 放置していた方が良い結果を出す、そんな風に思われているのかもしれない。

 実際、その辺は否定できなかった。
 何をどうと言われるよりかは、思うようにやらせてもらった方が気も楽だし。

「魔族に対しては武器の供給、魔物に対しては……防具ならできるし、食べ物なら大丈夫か? よし、やるだけやってみよう」

 俺は:DIY:を起動。
 魔物や魔族でも使える武具を揃え、料理をどんどん作っていく。

 装備に関しては、『プログレス』の機能を用いれば比較的容易に可能だ。
 魔物であろうと、知性さえ有していれば選択可能だからな。

 また、食べ物はそんな『プログレス』を装備できていない魔物でも食せるよう、ある程度工夫を凝らした物を生産している。

 彼らの活動源である魔力を多く摂取できるよう、魔石を粉末状にした物を混合。
 同時に、錬金術ベースの特殊な生産方法である錬産術で調理に術式を書き込む。

 結果、完成したのは取り込むことで一時的に全性能が強化されるブーストアイテム。
 ただし、その反動は凄まじく、しばらくすると酷い虚脱感に襲われることだろう。

 あくまでも、休人という厄介極まりない侵入者を相手取るための緊急手段だ。
 禁断症状などは(依存性的な意味では)出ないので、思う存分蹂躙してもらいたい。

「装備の方も……よし、できたか。あとはこれを錬産術で複製して大量生産だ」

 一つひとつ、オーダーメイドにしておいた方が性能は高いだろう。
 しかし、そこまで時間が無い……なんと数時間後には来るらしい。

 情報を得たのが遅いわけでは無く、休人の行動が早いとのこと。
 ……まあ、行き当たりばったりな人たちばかりだもんな。

 なので刻印やら魔法陣やら、刻めば誰でも同じだけの効果を発揮するものに力を注いでおいて、装備品自体の素材の質はあまり気にしないでおいた。

 もちろん、それでも:DIY:で出せる中では上位のアイテムだけども。
 ……星鉱石とか出すと、さすがに休人が可哀そうなので控えている。

「──あとはそうだな、アレも出すか」

《……よろしいのですか?》

「絶対に【魔王】は利用するだろうけど、裏の意図にも気づくだろう。だからこそ、あえてこのタイミングだ」

《畏まりました、すぐに準備します》

 そう言うと、しばらく『SEBAS』との接続が途絶える。
 呼べば来るだろうけども、それが必要なぐらいに忙しいことをさせていた。

 ──はてさて、休人たちはそもそも上陸できるのだろうか?

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

てめぇの所為だよ

章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

処理中です...