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DIY、対家族案を練る

妖刀戦争 その14

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 辿り着いた迷宮の奥地。
 俺と九拿はお互い、目的の物を手に入れるために一時協定を結んだ。

 まあ、上手くいくとは思っていない。
 それでも核から情報を抜き取るまでは、迷宮を破壊されるような大暴れをされてしまっては困るからな。

「──これはこれは、ようこ──げぶっ!」

「邪魔」

 せっかく俺たちの来訪を待ち受けてくれていた何者かは、九拿から一撃を喰らった。
 俺が認識できたのは、相手が武士っぽい男だったということのみ……うん、不憫だな。

 まあ、俺も俺でこっそり超小型ドローンを飛ばして更に奥へ向かわせているけども。
 核に触れ、この迷宮に関する情報をコピーできれば目的達成だ。

「むっ……」

「ええい、いい加減にし──ごぶっ!」

「あっ、脆い……」

「そ、そんなわけあるか! 迷宮の防御機構だぞ、なぜ壊せるんだ!?」

 迷宮の防御機構とは、事前に設定した範囲内に結界を展開できる罠だ。
 正確には、わざと踏むことで自分のために結界が張れる代物である。

 事前にそれを使えるのが自分だけとしておけば、相手がそれを利用することも無い。
 強度はかなりのもの……のはずなんだが、あっさりと九拿は破壊した。

「ええい、来るな!」

「! ……それ」

「ふはははっ、やっと気づいたか! そう、これこそが愚かなお前たちが率先して協力して作り上げた──新たな業禍物だ!」

 元より、迷宮側にも妖刀を揃える意味があることは予想していたが……まさか、新たな業禍物を作るためだったとは。

「この業禍物──」

「頂戴」

「や、やらせるわけが無かろう! ええい、さっさと離れろ!」

「……残念」

 見た目相応の技量はあるようで、業禍物だという妖刀を引き抜き一閃。
 これまではさしてそういった攻撃を気にしていなかった九拿も、さすがにこれは回避。

 結果、禍々しい斬撃が飛翔して──そのまま俺に命中。
 上下に分かれた俺の半身、それをすぐに元に戻して会話に混ざる。

「な、何なんだお前たちは……竜の攻撃すら通さない結果を壊し、妖刀に斬られてもすぐに蘇る──まるで化け物ではないか!」

「化け物…………もう言われ慣れた」

「私の心はいつでもただの人族ですよ。ただなぜか、そう呼ばれることが多いのです。同じことができる者など、この世界や他の世界にもごまんと居るというのに」

「そ、そんなわけあるか!?」

 いやいや、休人なら誰でもできますよ。
 ただ必要な時間長いこと、いちいち死亡後は別の場所で蘇生されるという点を除けば。

 ともあれ、業禍物の力は本物らしい。
 見ているだけでは解析が進まないので、早く何とかしたいが……ドローンの方もあるので、まだまだ時間が掛かりそうだ。

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