上 下
1,879 / 2,733
DIY、対家族案を練る

妖刀戦争 その03

しおりを挟む


 ──『夢幻刀』。

 レムリア世界とパシフィス世界、双方から必要なモノを取り寄せて作った一振り。
 そしてそれを【刀王】が振るったが……藁人形は斬れていなかった。

「……ふむ、面白いな」

「くっ、某も扱うことができれば……」

 だが二人はその結果を見ても、俺の刀が鈍らだとは思わない。
 振るった当人だけでなく、見ていただけで理解できるのは……さすがと言えよう。

 なお、『辻斬』が悔しがっているのは、彼女が他者の妖刀を振るえないため。
 あくまでも、彼女は彼女自身が打ち上げた妖刀のみしか制することができないのだ。

 なぜなら彼女は【妖刀鍛冶師】、戦闘職では無いからな。
 俺のように複数の職業に就く者は少ない、重ねれば重ねるほどデメリットがあるのだ。


 閑話休題けんぎょうデメリット


 それでも、『辻斬』は自らの経験から夢幻刀の性質を見抜いたらしい。
 そして、あらゆる刀に精通する【刀王】も同様の見識を持つ。

「──肉体にいっさいの影響を与えず、事象に干渉する刀か……これではたしかに、藁人形は斬れまい」

「だが、戦における働きはかなりのもの。魔の力を切り裂き、人の心を絶つ。不殺を貫くのであれば、最適であろう」

「ふむ……生け捕りはあまりせぬのだが、必要になる時もあるだろう」

「──物に当たっても、斬れないので非常に便利ですよ」

 そう言うと、【刀王】は夢幻刀の購入を決断してくれた。
 また、『辻斬』もサンプルとして一本買ってくれるらしい。

 ──ちょっとお高いですけど、その分の価値はあると思いますよ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 話が逸れに逸れまくっていたが、ようやく軌道が修正される。
 たしか、業禍物なる優れた妖刀云々で揉め事が起きたらしい。

「業禍物はその存在が確認されなくなると、登録が抹消され新たな妖刀が選定される。だが今回、失われていたはずの業禍物がある場所で大量に発見された」

「迷宮、それも新たに発見された物だ。その妖刀がどういった理由で集まったのか、それは定かではない……しかし、偽物であったとしても、業禍物と同等の力を振るえる品が出てしまえば、倭島は混乱するだろう」

 たしかに、迷宮の機能を使えば紛失した妖刀を回収したり、ゼロから過去に存在した妖刀を創造することもできるはずだ。

 ……しかしそれには、知性を有する迷宮の管理者──【迷宮主】が必要なはず。
 ただの迷宮では過去の業禍物を用意するなど、高度な仕掛けはできないはずだから。

 新しい迷宮、だが本当に出来たばかりかは不明だ……隠しておけば少し偽装できるし。
 確実に、裏で陰謀が行われている……今回もまた、死にまくる騒動だな。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」

サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

番だからと攫っておいて、番だと認めないと言われても。

七辻ゆゆ
ファンタジー
特に同情できないので、ルナは手段を選ばず帰国をめざすことにした。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

処理中です...