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DIY、対家族案を練る
神様談(23)
しおりを挟むそこは神々の領域。
無数に存在する神話ごと、異なる様相を醸し出している。
そんな中、とある休人に『失名神話』と認識されている神々が住まう領域。
そこでは現在──捧げられた供物の検品が行われていた。
「……■■■様」
「むむむっ、これは危ないなぁ。うんうん、責任取って僕が預かって……おっと、これもいけないな! よしよし、これも僕が──」
「■■■様!」
「痛ッ! ◆◆◆◆……君ぐらいだよ、僕にそんな物を向けられるのはね」
若い女神◆◆◆◆は、その手に握り締めたハリセンで■■■──創造神を叩く。
本来であれば意味などなさない、だがそれは他でもない創造神の権能で生まれた物。
たとえそれが本人の意思で無くとも、自らの権能の産物であればこそ意味を成す。
そんな彼らのやり取りに、周囲に居た神々も溜め息を零す。
「まったく、ツクルの布教で少しずつ力を取り戻しているだろうに……変わらんな」
「ええ、まったくです……それでこそ、私たちの主神様なのかもしれませんね」
「……そんな風に纏めても、現実は変わらんと思うぞ」
「………………。さ、さて、ツクルさんが私に届けてくださった物を確認しませんと! あら、これは……医療器具ですね。ええ、大事に保管させていただきましょうか」
医療神は死神と話しながら、失名神話唯一の休人信者であるツクルの捧げ物を調べる。
医療器具、回復魔法が存在するこの世界ではあまり使われないものだ。
それゆえマイナーな神となってしまっている医療神ではあるが、最近では『薬毒』という『超越者』や医療技術を持つ休人たちにより少しずつ格が回復しつつあった。
そんな医療神は、その手にした医療器具をここではないどこかへと仕舞う。
いずれそれを求める場所へ、医療器具が貸し与えられることになるはずだ。
「死神様にはどういった物が?」
「ふむ……寿命の分かる蝋燭のようだ。ツクルの世界に伝わる、古典を基に生み出した物らしい。無くとも把握はできるが……少し、試しておいても良かろう」
「あらあら、良かったですね」
「…………ふんっ」
和やかに時間は流れていた。
──突如として幼女の姿をした神が、意気揚々と現れるまでは。
「おーっと、誰かと思えばわれの格を高めてくれた主神様ではないか! あーあー、此度は本当に……いやー、本当に感謝しておらんこともないこともないこともないぞ!」
「……ほ、ほほう? そちらこそ、誰かと思えば僕の許しが無ければツクル君の役にまったく立てないでいた精霊神じゃないか。それはよかった、この僕の! お陰で! 君は役に立てたみたいだからね!」
『…………』
「なんだと、このクソ主神が!」
「そっちこそなんだ、若作り婆!」
お互いに罵り合う光景を、どうしたものかと◆◆◆◆は眺める。
今まではただ見ているだけだった……しかし今は、もう一つの選択肢が取れた。
「……アインさんとお話でもしましょう」
それが終わっても続いているならば、このハリセンを使うしかない。
そう思いながら、彼女は自らの使徒となった戦乙女と連絡を取り合うのだった。
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