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DIY、対家族案を練る
パシフィス技術 前篇
しおりを挟むアイスプル 星績の賢究所
パシフィス世界に滞在した日々は、あっという間に過ぎ去っていった。
それほどまでに、膨大な量の技術や知識を取り込んでいたのだろう。
今では学んだそのすべてが、俺……というか、『SEBAS』のデータベースに収まっている。
さすがに人の身で、完全な網羅は不可能であった。
家族関係で使えそうな技術だけ覚え、あとは記憶するに留めてある。
「──実験は成功だな。こっちの世界でも、普通に向こうの理に合わせた技術を使うことができている」
《アイスプルとパシフィス、双方の世界が理に関する取り決めを行ったからです。旦那様の功績に対する報酬、そう捉えていただいて構いません》
「掃除機で大暴れして、勝手に復興作業をして貰える報酬なら大歓迎だよ。他の世界の理もどんどん集めていきたいな」
現在、俺は『SEBAS』が運営を一から行っている迷宮内で実験をしていた。
向こうで学んだ技術が、本当にこちらでも正常に機能するのかのテストだ。
そして、結果は見事成功。
まったく同じ結果……というわけにはいかないようだが、八割か九割ぐらいは再現に成功しているだろう。
また、この実験には使わなかった星隕石なども使えばさらに精度は上がるとのこと。
冒険世界で使うならともかく、ここでなら問題なく機能するはずだ。
「冒険世界とレムリア、イベント世界では五割くらい。他の世界だとそれ以下でしか使えないんだよな?」
《はい。純然な機能はパシフィス世界のみに限られ、星間の契約で九割の再現性をアイスプルが得ました。そのアイスプルを認証している三つの世界、そしてそうではない世界とでさらに差が生じております》
「武闘世界、魔法世界、生産世界……他にもいくつかあったっけ? いずれにせよ、一度は行ってみないとな」
武闘世界にはジーヂーたち、魔法世界には『愚かな賢者』、生産世界には元祖錬産術の開発者たちが居る……二番目の人はともかくとして、他の人には顔を見せたくなる。
星の理も重要ではあるが、全部集めたら最強になれるわけでもない。
理を読み解いて利用するわけではなく、ただその法則性を反映しているだけだからだ。
「まあ、今のところはパシフィス世界の技術に慣れるところから始めてかないとな。まだまだこっちの技術と組み合わせたり、試さなければならないことばかりだ」
《解析はお任せください》
そうして俺と『SEBAS』は、いつまでもこの隔離された迷宮内でさまざまな実験を繰り返してくのだった。
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