虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
1,829 / 2,811
DIY、家族と戦う

家族談(01)

しおりを挟む


 ツクル──否、做が部屋から去った後。
 瑠璃、舞、翔は座っていた場所から一歩も動かずにいる。

 すでに解散を宣言されていた……が、それに従う道理は無かった。
 做の『お花摘み』はそこまで長くはない、それでも遅らせる術を知っている。

「『SEBAS』君、お願いね」

《畏まりました》

 再び部屋は暗くなり、プロジェクターが降ろされる。
 だが、それに做が気づくことは無い……彼の居る部屋からは見えないからだ。

 また、それと同じタイミングでいくつかの工作が行われている。
 今頃、部屋に持ち込んだ端末に連絡が入っている頃だろう。

 鬼の居ぬ間に洗濯、做が自身の戦う映像を省くことは初めから瑠璃に気づかれていた。
 予め『SEBAS』と話をつけ、今この状況が作られている。

「あっ、始まった! 父さん、凄い唖然とした顔になってるね」

「自分は関係無い、みたいなことを考えていたのかもしれないわね」

「でも、実際お父さんって何をやっているのか不思議なんだけど……今回の参加者も、本当にみんな強かったし」

「ふふっ、それがあの人の凄いところなの。昔から、いろんな人を惹きつけて。どんな場所でも、どんな姿でもね……本当、嫉妬したくなるぐらいにね」

 翔と舞は顔を合わせ……溜め息を吐く。
 そう、家族の中で一番神秘的と呼べるレベルで運の良い瑠璃ではあるが、做には敵わないと常日頃から語っていたのだ。

 瑠璃が幸運の持ち主ならば、做は奇縁の持ち主……そんな二人だからこそ、結ばれたんだろうなぁと子供たちは思っている。

 投影されて続けていた映像では、すでに瑠璃と做の戦いが始まっていた。
 あの手この手で障壁に挑む做、その手数は非常に幅が広い。

「父さん、自分で作る武器だったり、特別な能力だったり凄いよね……あれで攻撃力が1しかなくて、魔力と器用さも四桁まで届いてないなんてビックリ」

「ねえ、『SEBAS』。実際のところ、お父さんってどれくらい強いの?」

 子供たちは瑠璃と戦い、その高すぎる壁を知った。
 だからこそ、最終的に勝利を勝ち得た自分たちの父がどれほど強いのかが気になる。

 それを知るのは、この場においてただ一人だけ──ほぼ初期から共にあり、右腕以上に働いてきた『SEBAS』だけだ。

《旦那様は……そうですね、大前提として生存であれば誰よりも優れているでしょう。たとえマグマの底でも、永久凍土の中でも、宇宙に放り投げられても生き残ります》

「……クマムシみたい」

《奥様との試合でご理解いただけた通り、生存の中で勝利に必要な要素を見つけ出すことができます。なので、どれくらいと申されれば世界の中でも五指には入ります──なお、残りの四指は同等の生存能力を持ちます》

 世界最高峰の実力者たちの騒動に巻き込まれ、培った実力は伊達じゃない。
 做が瑠璃に勝利したのは、偶然ではなく必然とも言えるのだった。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>

ラララキヲ
ファンタジー
 フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。  それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。  彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。  そしてフライアルド聖国の歴史は動く。  『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……  神「プンスコ(`3´)」 !!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!! ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇ちょっと【恋愛】もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。 「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」 と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

処理中です...