1,825 / 2,813
DIY、家族と戦う
第二回家族イベント後篇 その20
しおりを挟むあと一分を生き延びるため、本格的に何でも使っている俺。
だが、ルリの尋常ならざる幸運の前では、そもそも実行すら許されないことばかり。
残り時間は確実に減っている。
さすがにルリでも、偶然時間が停止するなどとは考えなかったようだ。
「あと五十秒! 逃げきってみせる!」
「あら、そうはさせないわよ」
偶然俺の動く方向を読み切り、眼前に近づいてきていたルリ。
振るわれる短剣から神気を伸ばした神剣を避け、流れるように走る。
だがルリの運の良さが極まりつつあったのか、これまではかすりもしなかった攻撃が結界に触れてしまう──それだけで鞘仕込みの結界装置が破損、結界が解除されてしまう。
《旦那様!》
「分かってる、発動してくれ」
《──『生者』に内包された生存系[称号]の効果が発動されます》
内部でカチリと[称号]が起動したのと同時、俺は自身の動きに耐えられず死亡。
だが一定時間の生存を可能とする[称号]たちが発動し、俺を強制的にその場に残す。
時間だけならば、その効果で充分に耐えることができる。
しかし、ルリがそれを許すわけもないので逃亡は続行だ。
「なんとなく、ここで終わったと感じたのだけれど……やっぱり、アナタは凄いわね」
「そうじゃないと、自慢の夫で父親にはなれないだろ? どんな手を使ってでも、勝ちは取らせてもらうぞ」
「……本当、負けず嫌いね。なら、私も最期の力を使ってあげる!」
残り時間は──二十秒!
だがそれとほぼ同時、空から眩いほどの光が放たれた!
今の俺は『メタルスライム』を起動しているため、ルリの認識では魔法は通用しないということになっていたが……どうやら、ただの光魔法ではないようで。
《旦那様、アレは物理的な光を捻じ曲げて生み出されています。熱量は相当なもので、たとえ金属であろうと熔かしてしまいます》
「……つまり、この状態でも通じるわけだ。それなら倒せて当然、そして偶然当たったときに倒せると…………理不尽過ぎる!」
どうにか『SEBAS』も体を操り、光を避けようとした……が、体自体は俺の物、結界越しで操れる速度では、光を受け切ることはできなかった。
◆ □ ◆ □ ◆
光が降り注がれ、舞台は破壊される。
何も残っていないその場所で、ルリは溜め息を吐いた。
こうなることは分かっていた。
いつだってそうだったのだ──あの人は、想像を超える方法で私を驚かしてくれる。
「し、死ぬかと思った……」
どういった絡繰りか、頭だけで生き残るその姿は猟奇的とも言えた。
だが彼女にとっては、想像以上の結果と言うだけで好ましく思える。
「……ふふっ、やっぱり敵わないわ」
試合には負けたが、勝負には勝ったと思える気の晴れよう。
勝者を抱き締めてあげないと、そう考えたルリはツクルの下へ向かうのだった。
0
お気に入りに追加
646
あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!
七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ?
俺はいったい、どうなっているんだ。
真実の愛を取り戻したいだけなのに。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる