虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、家族と戦う

第二回家族イベント後篇 その20

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 あと一分を生き延びるため、本格的に何でも使っている俺。
 だが、ルリの尋常ならざる幸運の前では、そもそも実行すら許されないことばかり。

 残り時間は確実に減っている。
 さすがにルリでも、偶然時間が停止するなどとは考えなかったようだ。

「あと五十秒! 逃げきってみせる!」

「あら、そうはさせないわよ」

 偶然俺の動く方向を読み切り、眼前に近づいてきていたルリ。
 振るわれる短剣から神気を伸ばした神剣を避け、流れるように走る。

 だがルリの運の良さが極まりつつあったのか、これまではかすりもしなかった攻撃が結界に触れてしまう──それだけで鞘仕込みの結界装置が破損、結界が解除されてしまう。

《旦那様!》

「分かってる、発動してくれ」

《──『生者』に内包された生存系[称号]の効果が発動されます》

 内部でカチリと[称号]が起動したのと同時、俺は自身の動きに耐えられず死亡。
 だが一定時間の生存を可能とする[称号]たちが発動し、俺を強制的にその場に残す。

 時間だけならば、その効果で充分に耐えることができる。
 しかし、ルリがそれを許すわけもないので逃亡は続行だ。

「なんとなく、ここで終わったと感じたのだけれど……やっぱり、アナタは凄いわね」

「そうじゃないと、自慢の夫で父親にはなれないだろ? どんな手を使ってでも、勝ちは取らせてもらうぞ」

「……本当、負けず嫌いね。なら、私も最期の力を使ってあげる!」

 残り時間は──二十秒!
 だがそれとほぼ同時、空から眩いほどの光が放たれた!

 今の俺は『メタルスライム』を起動しているため、ルリの認識では魔法は通用しないということになっていたが……どうやら、ただの光魔法ではないようで。

《旦那様、アレは物理的な光を捻じ曲げて生み出されています。熱量は相当なもので、たとえ金属であろうと熔かしてしまいます》

「……つまり、この状態でも通じるわけだ。それなら倒せて当然、そして偶然当たったときに倒せると…………理不尽過ぎる!」

 どうにか『SEBAS』も体を操り、光を避けようとした……が、体自体は俺の物、結界越しで操れる速度では、光を受け切ることはできなかった。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 光が降り注がれ、舞台は破壊される。
 何も残っていないその場所で、ルリは溜め息を吐いた。

 こうなることは分かっていた。
 いつだってそうだったのだ──あの人は、想像を超える方法で私を驚かしてくれる。

「し、死ぬかと思った……」

 どういった絡繰りか、頭だけで生き残るその姿は猟奇的とも言えた。
 だが彼女にとっては、想像以上の結果と言うだけで好ましく思える。

「……ふふっ、やっぱり敵わないわ」

 試合には負けたが、勝負には勝ったと思える気の晴れよう。
 勝者を抱き締めてあげないと、そう考えたルリはツクルの下へ向かうのだった。

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