虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、家族と戦う

第二回家族イベント後篇 その16

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 自作コンボ『一撃千手』、それを使うために起動した『魔王の取腕』。
 権能を奪う本物の【魔王】の力を、部分的に再現している。

 そのため効果は権能の保存と利用、それを使いとある人物の権能を再現していく。
 それは最上位職【千手観音】、そして冒険世界固有の存在『超越者』の一人『一撃』。

 当人であれば双方を完全な形で行使可能だが、『魔王の取腕』は権能一つ分の容量しか一度に使用できない。

 なのでそれぞれの権能の性能を落とし、劣化させることで一つ分の権能として調整。
 新たに完成した権能モドキをセットし、俺はルリの下へ。

「──『撲殺の拳帯』、『インストール:ブレイクグローブ』」
《『SEBAS』、接近戦だ!》

《畏まりました》

 現在、俺の体を操っているのは俺自身ではなく『SEBAS』だ。
 LUCの低さで自由に動けない俺を、強制的に動かして歩けるようにしてくれている。

 そんな『SEBAS』に指示をするのは、これまで蒐集してくれていた戦闘プログラムの行使……『バトルラーニング』より、純粋な情報蓄積量なら上だ。

 体が勝手に動き、俺は障壁の前で拳を構えて勢いよく突きだす。
 瞬間、セットしておいた擬似権能が効果を発揮……数百の拳が同時に障壁へ向かう。

「これは……凄いわね、アナタ! オラオラオラオラァって感じよ!」

「さすがにこれで壊せなかったら、もう正直諦めてたぐらいだぞ……あと、それは言わないお約束だ」

 一撃のみを超強化する権能『一撃』、一度の攻撃を何千にも増やす職業【千手観音】。
 この二つを以ってして、彼の『超越者』は最強に連なった。

 その劣化版でも、『撲殺の拳帯』を使うことで足りない火力などを補う。
 そこまでしてようやく──障壁を完全に破壊することに成功した。

 それで終わりではなく、今度はルリ自身に攻撃するため急接近。
 情け容赦などはしない……ルリはそういうことをされることを、かなり嫌がるからな。

《『一撃』のセットを解除──再装填》

 同時に、『SEBAS』が先ほどの一撃をもう一度放てるようにしてくれた。
 ここだけ、当人よりも優れている……設定解除を行えば、再度同じ火力を出せるのだ。

「──“雪崩拳”!」

「ふふっ──“神聖盾ディバインシールド”」

 仙丹を練り込み、体の中で増大。
 正しい動きを『SEBAS』が俺の体に行わせると、筋肉が通常以上に駆動して何重もの拳撃を一度に放つ。

 そしてそれにもまた、『一撃千手』が乗るためそのすべてが強化される。
 一点に力が注がれた盾は、数度は防いだが結局は砕かれ──ルリに拳が届く。

「くっ……ふっふっふ、やるわね。この私に一撃を喰らわせるとは!」

「届いた……けど、全然減って無いな」

「私、アナタよりタフですもの」

「そりゃそうだよな、むしろ俺の基礎値は1しかありませんよ……」

 レベルが1上がることに、魔力と器用さが1ずつ上がっていた俺。
 しかし普通の休人は、1から5ぐらいは上がっていたらしい。

 ……ルリの場合はどうなるかなどお察し、それが全能力値+種族・職業・スキル補正もあるのだ、結局全然届かないんだよな。

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