上 下
1,821 / 2,733
DIY、家族と戦う

第二回家族イベント後篇 その16

しおりを挟む


 自作コンボ『一撃千手』、それを使うために起動した『魔王の取腕』。
 権能を奪う本物の【魔王】の力を、部分的に再現している。

 そのため効果は権能の保存と利用、それを使いとある人物の権能を再現していく。
 それは最上位職【千手観音】、そして冒険世界固有の存在『超越者』の一人『一撃』。

 当人であれば双方を完全な形で行使可能だが、『魔王の取腕』は権能一つ分の容量しか一度に使用できない。

 なのでそれぞれの権能の性能を落とし、劣化させることで一つ分の権能として調整。
 新たに完成した権能モドキをセットし、俺はルリの下へ。

「──『撲殺の拳帯』、『インストール:ブレイクグローブ』」
《『SEBAS』、接近戦だ!》

《畏まりました》

 現在、俺の体を操っているのは俺自身ではなく『SEBAS』だ。
 LUCの低さで自由に動けない俺を、強制的に動かして歩けるようにしてくれている。

 そんな『SEBAS』に指示をするのは、これまで蒐集してくれていた戦闘プログラムの行使……『バトルラーニング』より、純粋な情報蓄積量なら上だ。

 体が勝手に動き、俺は障壁の前で拳を構えて勢いよく突きだす。
 瞬間、セットしておいた擬似権能が効果を発揮……数百の拳が同時に障壁へ向かう。

「これは……凄いわね、アナタ! オラオラオラオラァって感じよ!」

「さすがにこれで壊せなかったら、もう正直諦めてたぐらいだぞ……あと、それは言わないお約束だ」

 一撃のみを超強化する権能『一撃』、一度の攻撃を何千にも増やす職業【千手観音】。
 この二つを以ってして、彼の『超越者』は最強に連なった。

 その劣化版でも、『撲殺の拳帯』を使うことで足りない火力などを補う。
 そこまでしてようやく──障壁を完全に破壊することに成功した。

 それで終わりではなく、今度はルリ自身に攻撃するため急接近。
 情け容赦などはしない……ルリはそういうことをされることを、かなり嫌がるからな。

《『一撃』のセットを解除──再装填》

 同時に、『SEBAS』が先ほどの一撃をもう一度放てるようにしてくれた。
 ここだけ、当人よりも優れている……設定解除を行えば、再度同じ火力を出せるのだ。

「──“雪崩拳”!」

「ふふっ──“神聖盾ディバインシールド”」

 仙丹を練り込み、体の中で増大。
 正しい動きを『SEBAS』が俺の体に行わせると、筋肉が通常以上に駆動して何重もの拳撃を一度に放つ。

 そしてそれにもまた、『一撃千手』が乗るためそのすべてが強化される。
 一点に力が注がれた盾は、数度は防いだが結局は砕かれ──ルリに拳が届く。

「くっ……ふっふっふ、やるわね。この私に一撃を喰らわせるとは!」

「届いた……けど、全然減って無いな」

「私、アナタよりタフですもの」

「そりゃそうだよな、むしろ俺の基礎値は1しかありませんよ……」

 レベルが1上がることに、魔力と器用さが1ずつ上がっていた俺。
 しかし普通の休人は、1から5ぐらいは上がっていたらしい。

 ……ルリの場合はどうなるかなどお察し、それが全能力値+種族・職業・スキル補正もあるのだ、結局全然届かないんだよな。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」

サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――

番だからと攫っておいて、番だと認めないと言われても。

七辻ゆゆ
ファンタジー
特に同情できないので、ルナは手段を選ばず帰国をめざすことにした。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

処理中です...