虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
1,780 / 2,835
DIY、家族と戦う

第二回家族イベント準備 その05

しおりを挟む


 生産世界からの要求に対して、俺はある程度の譲歩だけして依頼を引き受けた。
 ただし、技術のいっさいを見させはしないので、解析するなら頑張ってもらいたい。

 交渉はギルド長がやってくれるので、その辺りは考えなくてもいいのが楽だ。
 ……それよりも今は、本来の約束相手と会う際のことを考えなければ。

「お、おーい、『騎士お……う」

「──ああ、其方であったか」

「……お、遅れてすみません」

「遅れる? そうか、例の件だな。気にすることは無い、星間交渉は国同士のやり取りよりも重要視されること。何ら問題ない」

 いつもの串焼き屋で、彼女──『騎士王』は俺を待っていた。
 ただし、普段と違い政治的な場で用いるような態度をしながら。

 ……あー、これ絶対怒ってるな。
 ただ、自分にも何割か責任もあるし、帰るという選択肢はありえないから、とりあえず怒ってます……みたいな感じかもしれない。

「──『流燦杖』」

 ビクッ

「[ドラグライズ]、大衆の前……」

 ビクッ ビクビクッ

「……俺一人が悪いわけじゃ、ないよな?」

 かつて、『騎士王』が振るうのに相応しい鑓を創ったことがある。
 だからこそ、俺に生産チートがあると知っていた『騎士王』……だというのに。

 大衆の面前でそれをやらせりゃあ、こうなることはコイツにも予期できた。
 俺も引き受けたし、責任はある……だが、利用しているのは主に『騎士王』である。 

「『騎士王』、とりあえず口調はいつものやつに戻してくれ。じゃないと、俺も面倒臭く感じる」

「……『生者』」

「そのうえで、だ。さっきまでのやり取りはちゃんと伝える──だから、俺の手伝いをしてくれないか?」

 そう問いかけると、しばらくした後に首を縦に振る『騎士王』。
 何でもできる万能な『騎士王』なので、常人では思いつかないいいアイデアをくれる。

 ──そう、家族を楽しませるためには何をすべきかを教えてもらおう!

  ◆   □   ◆   □   ◆

「…………なあ、私もそれに──」

「ダメ」

「少しぐらい──」

「ガウェイン──あっ、ボタンを壊すな!」

 国政を放り出して、アイスプルに来ようとするから悪いんだ。
 事情を説明した後、向けられたのは期待の眼差しである。

 この世界──冒険世界において『騎士王』は無くてはならない存在。
 一瞬ならともかく、絶対に長期滞在を望んでいる。

「まあとにかく、とりあえずしばらく空けるからその間のフォローを頼みたい。何か、問題はあるか?」

「……いや、構わん。それぐらいならば、片手間でできるからな。しかし、一度は行ってみたいものだな」

「本当に一度切りなら、考えるけどな」

「…………」

 座標を知られれば、いつでも潜り込んでくる気がするからな。
 何でもできちゃう相手に、そこまで教える義理など無いのだ。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

処理中です...