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DIY、今度は開く
敵討ち決闘 前篇
しおりを挟む俺個人で行う布教活動は終了。
あとは人々が紡ぐウワサによって、自ずと広まることを信じている。
ある程度レベルを上げた【宣教師】だが、今回のこれは“職業強化”がやり辛い。
なのでしばらくはセットして、そのまま経験値を稼いでいくつもりだ。
「……ん、アレは?」
始まりの街でふらふらとしていた俺だが、噴水の前が賑わっているのを目撃。
念のため“孤絶ノ衣”で姿を隠し、その様子を上から見るのだが……。
「…………Oh!」
そこでは少女が仁王立ち。
隣には達筆な字でご丁寧に、ある言葉が掛かれている──『アンノウン、求ム!』と。
「あの娘はいったい……」
《──冒険世界への渡航記録がありませんので不明ですが、おそらくは、旦那様の決勝戦の相手であるジーヂーの関係者でしょう》
「アンノウンの名前の方だから、まあ初心者部門を闘った人か観ていた人の関係者なわけだな。しかし、何故に今さら」
《求む、そしてあの格好から武闘世界を選んだ休人でしょう。表情などから察するに、ある程度力を付けたうえで敵討ちを……といったところかもしれません》
チャイナ服の少女……マーカーの表示が正しければ、名前は『ナヨ』というらしい。
あの爺さんにあんなに可愛い孫が居るとはな……遺伝子は引き継がれなかったようだ。
「あれ、俺は応えるべきなのか?」
《応える必要はございませんが、応えても良いと思います。旦那様には、それを必要とするタスクもございますので》
「…………あっ、アレか」
同じ闘技大会での出来事なので、連想して思い出すことができた。
今はいちおうでも【聖職者】だったのだがな……うん、いきなり金儲けか。
「じゃあ、必要な職業に切り替えようか。ついでに必要なロールプレイに関しても考えておかないと」
《畏まりました》
素早く相談を済ませ、職業や称号などを切り替える。
そして、姿を消したままこっそりと足元に手紙を落とし──転移を行う。
◆ □ ◆ □ ◆
「!」
すぐに気づいたナヨは、確認もせずに勢いよく中身を確認する。
そして、そのまま紙を放り投げて一目散に転移門を介してどこかへ向かう。
落とされた紙を休人が拾えば、それを読んでナヨと同じ行動を取る。
何度かそれを繰り返した後、ようやく声に出して内容を読み上げる者が現れた。
「『アンノウンより。闘技場にて待つ』だってよ! こうしちゃいられねぇ!」
そして、誰も彼もが闘技場のあるイベント世界へ駆け出す。
賑わっていた噴水は、誰も居ない無人の場所と化した。
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