上 下
1,712 / 2,752
DIY、広めに向かう

異神話対戦 その20

しおりを挟む


 かくして、抜け神こと脱獄神騒動は幕を閉じ、アインヒルドが正式に俺の専属戦乙女になった。

 彼女には引き続き、ここヴァルハラで流通させた『プログレス』の観察、そして一部技術のモニターとなってもらう。

「これからよろしくな、アインヒルド」

「はい、よろしくお願いします……ところでこれから、私は貴方のことどう呼べばよろしいのでしょうか?」

「別に何でもいいぞ、貴方でも『生者』でもご主人でも、好きに呼べばいい」

「では、ご主人にしましょう……名前で呼ばれるのは、控えておきたいのでしょう?」

 いつもいつも、『生者』と名乗ってばかりだしな。
 特に深い意味は無かったが、それはジンリと再開してから意味を持つようになった。

 いずれにせよ、『生者』でバレるのだがそちらは構わない。
 言霊とでも言うべきか、正式な名前を知られることこそが問題だからな。

「ご主人、抜け神の迎えが来たようですよ」

「ってことは、創造神様の神話の神様か。俺は数柱しか知らないけど、いったいどんな神様が……げっ」

「……ご主人?」

「────わっはっはっは! 天知る、地識る、われ記す! 今ここに、精霊神降臨!」

 精霊神、その名が冠している通り精霊を司る神様だ。
 見た目はロリ、そして言動は年配者……いわゆる合法ロリである。

 そして俺は、この神様に一度だけ謁見したことがあった。
 いろいろとあったせいで、俺はなぜか──気に入られている。

「おー、久しぶりじゃのツクルよ。おっと、皆の前では『生者』じゃったな。うむうむ、今日も今日とて死んでいるようじゃな」

「…………え、ええ、相変わらず。精霊神様もお元気そうで」

「かー、そりゃそうじゃよ! 最近は、休人どもが精霊を強く信じておるからのう! 信仰もたっぷり来ておる──それもこれも、すべてお前さんが言った通りじゃな!」

「……我々は知識として、存在自体は認識していますので。そこにご利益さえあれば、大半の者は信じるようになる。私はそれだけしか言っておりませんよ」

 言葉を濁し、話を逸らそうとしたが……ダメだ、逃げきれない。
 もうダメか、このままだと────と思ったその瞬間、天から光が降り注ぐ。

「むっ、これは……! せ、『生者』、われの指輪を出すのじゃ!」

「……これですか?」

「うむ……あとはこれをこうして──受け取るが良い!」

「! これは……!」

「うむ、しっかり着けておくのじゃよ! おのれぇ、あのクソ主神めがぁ──ッ!」

 光がふわふわと精霊神と脱獄神を、ゆっくりと上へ運んでいく。
 ……アレだろう、さながらUFOによるアブダクションを見ているみたいだ。

 そんな中、精霊神が俺の指輪を見ながら何かを投げつけ──それが吸い込まれる。
 いったい何をしたのか、それを聞く暇もなく二柱の神はどこかへ消えていくのだった。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。 与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。 そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。 「──誰か、養ってくれない?」 この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。

異世界行ったらステータス最弱の上にジョブが謎過ぎたからスローライフ隠居してたはずなのに、気づいたらヤバいことになってた

カホ
ファンタジー
タイトル通りに進む予定です。 キャッチコピー 「チートはもうお腹いっぱいです」 ちょっと今まで投稿した作品を整理しようと思ってます。今読んでくださっている方、これから読もうとしていらっしゃる方、ご指摘があればどなたでも感想をください!参考にします! 注)感想のネタバレ処理をしていません。感想を読まれる方は十分気をつけてください(ギャフン

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

World of Fantasia

神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。 世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。 圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。 そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。 現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。 2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。 世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。

処理中です...