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DIY、広めに向かう
異神話対戦 その17
しおりを挟む脱獄神は創造神様の神話に属していた。
まあ、俺がそこまで詳しくないにしても、脱獄の神というのはこれまでの人生で一度も聞いたことの無い存在だ。
もしかしたら、そんなマイナーな点が抜け神になった理由なのかもしれない。
……恩恵にあやかれているのであれば、普通に所属していられるだろうからな。
「──ふぅ、結構な数を開けられたな」
「……試してみましたが、どうしてそこまで器用に開錠できるのですか? かなり高度な仕掛けが施されている箇所もありましたよ」
「うーん? まあ、たしかにちょっと面倒な部分もあったな。けどまあ、そういうことが上手いんだよ。処刑されるなんて事態になったら、逃げるための必須スキルだろう?」
実際には:DIY:──つまり創造神様の力によるものだが、とりあえず誤魔化す。
鍵を掛けるための技術を把握し、逆算することで外し方を認識しているぞ。
だが、今この状況を脱獄神が聞いていないという確証が持てなかった。
監獄と言えば看守、つまり見張りがいつ来てもおかしくはないからだ。
「! ……アインヒルド、来るぞ」
「ええ、そのようですね……それと、アインヒルドと呼ばないでください」
「もう後付けみたいに言わなくてもいいだろうに」
「呼・ば・な・い・で・く・だ・さ・い!」
やれやれ、と嘆息しつつ警鐘が示す先に武器を構える。
現れたのは三メートルぐらいの巨人、その手にはジャラジャラと鎖を垂らしていた。
おそらくはそれが、脱獄神が配備していた看守なのだろう。
アインヒルドが“千変宝珠”を槍と化し、攻撃を仕掛ける。
「おー、固い固い。囚人が暴れても対抗できるよう、それなりにレベルが高いみたいだ。そのうえで、本来なら神威で性能強化だろうからな……そりゃあ逃げられないか」
「くっ……!」
「大丈夫かー、手伝うぞー」
「問題ありません、そこで大人しく観ていてください──『マーシャルアーツ』!」
武技を本来の武器でなくとも、使うことができるという『プログレス』。
今回の場合、槍以外では使えない武技でもある程度制限を緩和してくれる。
さすがに槍で体術の武技は使えなくとも、武器からエネルギーを発射できれば射撃系の武技も使えるわけだ。
制限として、手の甲に浮かんだ紋様の武器で使える武技で無ければ使用できない。
アインヒルドはその制限を、成長によって変更時間の短縮に重きを置いて育てている。
コロコロ使える武技を変えつつ、自分自身も振るう武器の種類を変更していく。
そのうえ、改良版の“千変宝珠”はルーン文字を上乗せして性能を上げられる。
「──『停止』!」
ルーン文字の『I』を描くと、現在展開していた剣に書き込む。
ちょうどそのとき、飛来した鎖に剣を当てると──鎖の動きが停止する。
普段は『氷』として使われることが多いのだが、戦乙女などルーンの扱いに長けた者であれば別の解釈をすることができるらしい。
ただし、基礎的な解釈以外での発現は相応に魔力を消費するようで。
冷や汗を掻きながら、それでも終わらせようとアインヒルドは剣を振るう。
「“斬──」
「────ッ!」
「しまっ……」
「──『ポイントシャッフル』っと。悪い、この辺りは全部開放したからそろそろ次に行くぞ」
指定した座標同士で、ランダムだが転移を行うことができる『プログレス』。
今は俺とアインヒルドが身に纏う鎧、その二ヵ所だけなので確定して入替可能だ。
反撃をしようとしていた看守の攻撃をそのまま受け、[モルメス]を刺し込む。
絶命の声を上げることも無く、そのまま消滅していった。
「じゃあ、行こうか」
「……はい」
ほとんど開放したし、向こうが派遣した看守も倒した。
そろそろこちらも開放してほしいが……そもそも、外側はどうなっているのやら。
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